こんにちは。
ALLアプローチ協会の山口です。
オステオパシーや内臓マニピュレーションを学び始めると、
「腹膜リリース」
という言葉を耳にする機会が増えてきます。
しかし、実際の臨床では
「腹膜って何を触っているの?」
「筋膜とは何が違うの?」
「腹膜だけをリリースすれば良いの?」
と疑問を持つセラピストも少なくありません。
腹膜は、単なる”膜”ではありません。
腹部の臓器同士をつなぎ、滑らかに動かすために欠かせない重要な組織です。
腹膜の構造を理解すると、内臓アプローチの考え方は大きく変わります。
今回は、施術前に知っておきたい腹膜の解剖学について解説します。
【腹膜とは何か?】
腹膜とは、
腹腔内の臓器を包み込み、支えている薄い漿膜です。
腹膜は大きく分けて2種類あります。
・壁側腹膜(腹壁の内側を覆う)
・臓側腹膜(内臓の表面を覆う)
この2つは連続しており、
腹腔全体を一つの空間として形成しています。
つまり、
腹膜は「一枚の膜」で身体を包んでいるわけではなく、
連続した膜構造として全身につながっています。
【腹膜は内臓を支えるだけではない】
腹膜には、
単に臓器を包む役割だけではありません。
例えば、
・内臓を適切な位置で保持する
・血管やリンパ管、神経の通り道になる
・腹腔内で臓器同士の摩擦を減らす
・炎症が広がるのを防ぐ
など、多くの役割があります。
施術では、
この「滑走性」が非常に重要になります。
【腹膜は滑る組織である】
健康な腹膜では、
呼吸や姿勢の変化に合わせて、
内臓同士が滑らかに動いています。
例えば、
吸気では横隔膜が下降し、
胃や肝臓、小腸、大腸もわずかに位置を変えています。
この動きを可能にしているのが、
腹膜と腹膜液です。
しかし、
手術歴
炎症
外傷
慢性的なストレス
姿勢不良
などによって、
腹膜の滑走性が低下することがあります。
これが、
内臓の動きにも影響を与える要因になります。
【腹膜と間膜の違い】
セラピストが混同しやすいのが、
腹膜と間膜です。
腹膜は腹腔全体を覆う膜ですが、
間膜は、
腹膜が二重になってできた構造です。
例えば、
・腸間膜
・胃間膜
・横行結腸間膜
などがあります。
間膜の中には、
動脈
静脈
リンパ管
神経
が走行しています。
そのため、
腹膜を理解することは、
血流や神経支配を理解することにもつながります。
【大網・小網も腹膜でできている】
腹膜の代表的な構造が、
大網と小網です。
大網は、
胃から垂れ下がる脂肪の多い膜構造で、
腹部の免疫機能にも関与しています。
一方、
小網は、
胃と肝臓を連結する重要な腹膜です。
これらも施術では重要な評価ポイントになります。
【呼吸と腹膜の関係】
腹膜は、
呼吸のたびに動いています。
横隔膜が下降すると、
肝臓
胃
脾臓
腸
も一緒に移動します。
つまり、
腹膜だけを見るのではなく、
横隔膜の可動性も評価する必要があります。
呼吸が浅い方では、
腹膜全体の動きも小さくなることがあります。
【腹膜は全身とつながっている】
腹膜は腹部だけの組織ではありません。
筋膜
横隔膜
後腹膜
骨盤内臓器
間膜
など、
多くの組織と連続しています。
だからこそ、
腹膜の緊張は、
腰痛
肩こり
呼吸制限
姿勢
内臓可動性
などにも影響すると考えられています。
【施術前に評価したいポイント】
腹膜リリースを行う前には、
まず評価が必要です。
確認したいポイントは、
✅ 呼吸による腹部の動き
✅ 横隔膜の可動性
✅ 腹壁の緊張
✅ 内臓の可動性
✅ 手術痕や瘢痕組織
✅ 肋骨の可動性
✅ 骨盤の可動性
腹膜だけを評価するのではなく、
腹腔全体の動きを確認することが重要です。
【腹膜リリースで大切なのは「膜を押すこと」ではない】
腹膜リリースという名前から、
膜を押したり引っ張ったりする施術をイメージする方もいます。
しかし、
重要なのは、
膜そのものを動かすことではありません。
評価したいのは、
腹膜が本来持っている
滑走性
柔軟性
可動性
です。
無理にテンションを加えるよりも、
組織が自然に動ける方向を感じ取ることが、
オステオパシーでは大切になります。
【腹膜だけを見ても施術は変わらない】
腹膜の緊張があったとしても、
原因が腹膜にあるとは限りません。
横隔膜なのか。
肋骨なのか。
姿勢なのか。
呼吸なのか。
骨盤なのか。
あるいは内臓そのものなのか。
一つの組織だけを評価するのではなく、
身体全体のつながりを考えることが、
施術の精度を高めるポイントになります。
【最後に】
腹膜リリースとは、
膜を押す技術ではありません。
腹膜が本来持つ、
「滑る」「動く」「支える」
という機能を理解し、
腹腔全体の動きを評価するための考え方です。
大切なのは、
・腹膜の構造を理解する
・壁側腹膜と臓側腹膜の違いを知る
・間膜や大網・小網との関係を理解する
・呼吸による可動性を評価する
・腹膜だけではなく全身とのつながりを見る
という視点です。
テクニックだけを学ぶのではなく、
まず解剖学を理解する。
その積み重ねが、触診力と施術の質を大きく向上させます。
腹膜リリースが変わるのは、
新しい手技を覚えたときではなく、
腹膜を「一枚の膜」ではなく「身体全体をつなぐ連続した組織」として理解できたときです。
ALLアプローチ協会
代表 山口拓也

























