皆さん、こんにちは。
ALLアプローチ協会 代表の山口拓也です。
今回は、「咬筋リリース」について、解剖学から臨床までセラピスト向けに詳しく解説していきます。
咬筋は「噛む筋肉」というイメージがありますが、実際には顎関節の安定性や顔貌、血流、感情、さらには全身の姿勢とも深く関係している筋肉です。
この記事では、咬筋の解剖学だけでなく、臨床で結果を出すために知っておきたいポイントまで分かりやすく解説します。
① 咬筋の解剖学

咬筋は、人体の中でも非常に強い力を発揮する咀嚼筋の一つです。
起始は頬骨弓、停止は下顎枝外側面および下顎角に付着しています。
作用は主に
- 下顎の挙上(口を閉じる)
- 軽度の前方移動
- 顎関節の安定化
です。
支配神経は三叉神経第三枝(下顎神経)の枝である咬筋神経。
血液は主に咬筋動脈から供給されます。
また、浅層では耳下腺筋膜やSMASとも連続し、深層では下顎枝や顎関節包とも密接に関係しています。
つまり、咬筋は単なる「噛む筋肉」ではなく、顔面全体の機能を支える重要な筋肉なのです。
② 咬筋は「速く噛む筋肉」と「強く噛む筋肉」に分かれる
意外と知られていませんが、咬筋は浅層と深層で役割が異なります。
浅層咬筋は、大きな咬合力を発揮し、硬いものを噛む際に重要な役割を担います。
一方、深層咬筋は顎関節を安定させ、咬合時の細かなコントロールに関与すると考えられています。
つまり、
- 浅層=力を出す
- 深層=安定させる
という役割分担が存在します。
この違いを理解すると、顎関節症や食いしばりへの評価・施術の精度も大きく向上します。

③ 咬筋は感情で硬くなる
咬筋は、感情の影響を非常に受けやすい筋肉です。
ストレスや緊張、不安、怒りなどを感じると、多くの人は無意識に歯を噛み締めます。
これは交感神経が優位になり、防御反応として咀嚼筋の緊張が高まるためです。
実際に、
- 食いしばり
- 歯ぎしり
- 朝起きたときの顎の疲労感
などは心理的ストレスとの関連が指摘されています。
そのため、咬筋だけを柔らかくしても、ストレス環境が変わらなければ再び硬くなることは少なくありません。

④ 咬筋の血管
咬筋には咬筋動脈が走行しています。
咬筋動脈は顎動脈から分岐し、下顎切痕を通って咬筋深層へ向かいます。
また、
- 横顔面動脈
- 顔面動脈
なども周囲を走行しており、顔面への血流に関与しています。
咬筋の緊張が続くと筋内圧が上昇し、血流が低下することで疲労物質が蓄積しやすくなります。
これが慢性的な張りや痛みにつながる一因です。
⑤ 咬筋は頬骨を引っ張っている
咬筋は頬骨弓から起始しているため、筋緊張が高まると頬骨へ持続的な牽引力が加わります。
その結果、
- エラ張り
- 顔幅が広く見える
- 左右差
- 小顔施術で戻りやすい
といった状態につながることがあります。
もちろん骨そのものが変形するわけではありませんが、筋緊張によって軟部組織のバランスが変化し、顔の印象に影響を与えることは臨床でもよく経験します。

⑥ 咬筋を施術しても戻る理由
「咬筋を緩めても数日で戻ってしまう」
これは珍しいことではありません。
その理由は、咬筋が全身の影響を受けているからです。
例えば、
- 顎関節の可動性低下
- 側頭筋との協調性低下
- 舌骨・頚部筋群の緊張
- 呼吸パターンの乱れ
- ストレスや食いしばり
- 姿勢不良
などが残っていると、咬筋だけ施術しても再び負担が集中してしまいます。
そのため、臨床では局所だけではなく、顎関節・頭蓋・頚部・呼吸・姿勢まで評価することが重要です。
⑦ まとめ
咬筋は、単なる「噛む筋肉」ではありません。
顎関節の安定化、血流、神経、姿勢、感情、さらには顔貌にも影響を与える重要な筋肉です。
だからこそ、咬筋リリースでは筋肉だけを見るのではなく、
- なぜ咬筋が硬くなったのか
- なぜ戻ってしまうのか
- 全身とのつながりはどうなっているのか
という視点を持つことが、施術効果を高めるポイントになります。
局所ではなく全身を評価することが、再発しにくい施術につながります。
























