いつもメルマガをご覧頂き誠に有難うございます。
ALLアプローチ協会 代表 山口です。
本日は、セラピストの皆様に向けて
「仙腸関節テクニックの重要性について」
というテーマでお伝えさせて頂きます。
皆さんは、仙腸関節ってよくアプローチしますよね。
でも、仙腸関節をなぜアプローチすべきなのかって知ってますか?
具体的に説明できるセラピストって非常に少ないと思います。
ぜひ、この記事を臨床の参考にして頂けると幸いです。
【仙腸関節とは?】
まず、仙腸関節とは仙骨と腸骨の間にある関節を仙腸関節と言います
周囲の人体により強く連結しており人体の土台で3−5mm(1,7mm以下)ほどの可動域しかありません。
仙腸関節が動くか?動かないか?で論議されたりもしてますね。
昔は、仙腸関節は動かない関節だから機能障害が起こるはずないと言われてきました。
仙腸関節自体を動かす作用を持っている筋肉は無いとされてますからね。
実際は、体液循環さえ流れていれば、仙腸関節に可動域があり痛みとの関連があると言われています。
◆仙腸関節の可動域
屈曲 1.3°
伸展 1.7°
側屈 0.5°
回旋 0.6
【仙腸関節と体液の重要性】
仙腸関節は、L字型の関節面を持ち、回転や滑る動きが可能なため、歩く、走る、座る、曲げるなど様々な動きができるようになっています。
仙腸関節は、滑膜性関節であり、関節包が存在しています。
関節包がうまく機能するためには、体液循環が正常なことが必要不可欠です。
なぜなら、関節包内の体液が運ばれる事で、関節に必要ななめらかさや可動性を維持しているからです。
仙腸関節に問題がある場合、仙棘靭帯・仙結節靭帯のような仙腸間の靭帯に伝達され坐骨神経痛などを発症させます。
【仙腸関節を安定させる筋肉について】
仙腸関節を安定させる筋肉として、
中間位にて大臀筋と内腹斜筋で安定しており
前傾・後傾時では、靭帯で安定していると言われています。
【仙腸関節の役割って?】
仙腸関節の役割として
①背骨から伝わる重力の重みを足へと伝達する役割 「荷重の伝達」
②背骨や股関節の運動を助ける「運動補助」の役割
上記の2つが有名な役割として挙げられます。
【仙腸関節から起こる痛みとの関係】
仙腸関節のアプローチをすると、各関節の痛み治療に有効です。
腰痛・肩こり・股関節痛・膝痛などにもよく効きます。
これはなぜか?
まだ、医学的にはっきりと分かっていないらしいのですが
いろんな説があります。
①脳の痛覚中枢に伝達する経路が存在しているから
②感覚受容器がたくさんあり、誤作動を起こして疼痛を軽減する
③筋膜ラインのほとんどが骨盤を経由しているため、筋膜のねじれの修正から疼痛を軽減する
などなど・・・
エネルギー系なども入れたら、もっといろんな説がありますね。
【仙腸関節を動かすためには?】
最初に、骨盤中間位で仙腸関節を安定させているのは
大臀筋と内腹斜筋と書きました。
やはり、仙腸関節の動きを引き出す場合は
腹膜系のアプローチと臀筋群に対するアプローチも重要になってきますね。
【仙腸関節をアプローチすると他にどんな効果が?】
①歩行機能のアップ
②体幹コアマッスルの活性化
③下肢血流量のアップ
④頸部〜胸郭〜上肢帯の筋緊張緩和
⑤筋膜ラインの修正(複数)
などなどがあります。
結果、肩こりや腰痛、膝痛などにも効きますから
絶対アプローチすべきですね。
【仙腸関節の評価】
仙腸関節の評価に対しては、
ブログでは簡単に書かせて頂きたいと思います。
まず、今から書かせて頂く評価は前傾や後傾でなく
仙骨に対して上後腸骨棘(Posterior superior iliac spine:PSIS)の位置に注目します。
一般的に、骨盤が開いてしまっている状態では、仙骨に対してPSISの位置が後下方に偏位してしまっています。
A:前方 P:後方 S:上方 I:下方
そして、右の腸骨がPIしている場合には、右(Right)のPIなのでRPIと表現します。
逆に、左の腸骨がPIしている場合では、左(Left)のPIなのでLPIと表現します。
【骨盤の歪みのパターン】
それは、PI(後下方)腸⾻ 、AS(前上方)腸⾻ 、AI(前下方)腸⾻ 、PS(後上方)腸⾻です。
そして、いわゆる“骨盤が開いてしまっている状態”とは、PI腸骨を意味します。
つまり、右の骨盤が開いている場合にはRPIですし、左の骨盤が開いている場合にはLPIですね。
PI腸骨では、仙骨に対して腸骨が後下方に偏位している状態なので、腸骨全体の動きとしてはアウトフレアの方向に偏位することを意味します。
位置異常をしっかり把握したら
仙腸関節のズレをしっかり3D意識して戻せば
アプローチは完了ですね。
【仙腸関節と恥骨リリースの関係】
恥骨は骨盤を構成する骨格の1つです。
そして、恥骨は恥骨結合でつながっており仙腸関節の動きは恥骨結合を支点とし可動しています。
そのため、恥骨結合部の粘弾性が失われ可動性が低い状態だと仙腸関節も正常な動きがなくなってしまいます。
一度、恥骨部分に微細な振動を加えるクリープ現象により、粘弾性が回復し仙腸関節の動きもアップするのでぜひ試してみて下さい。
【仙腸関節テクニックのコツ】
仙腸関節や距骨下関節などの普段から自重負担がかかる部位は、力を加えた瞬間に関節がロックされ押しても引いても動かなくなる特徴があります。
靭帯などの軟部組織や筋が瞬間的に(反射で)緊張するためと考えられます。
しかし一方で、一定の力を加え続けるとゆっくりと動き出す特徴があります。
この特殊な関節の動きは、関節静的反射と関節運動反射が同時に起きているためだと考えられます。
関節静的反射 | 外の力に対して関節が硬くなる |
関節運動反射 | 動く関節の動きを制御する |
【仙腸関節の重要性】
仙腸関節には、負荷を吸収しながら下肢にゆっくり伝達するダンパー作用があります。
※ダンパー作用とは?
自動車や飛行機は急激な衝撃に備えるために、ダンパー(油圧式負荷吸収装置)と呼ばれる緩衝装置を用いられています。注射器のように押すときも引くときもゆっくりと動く作用です。
バネだけだと状態が何度も激しく上下して危険ですが、ダンバーがあれば安全になります。
このダンパー作用により、急に止まる、急に動く、ジャンプする、着地するとった負担の大きい動作をしても、靭帯を損傷することなく次の動作へスムーズに移れます。
二足歩行のロボットがジャンプした後に転んでしまうのは、ゆっくりとした衝撃緩和を行えないからです。それほど仙腸関節の機微な動きを人工的に再現することは難しいです。
腸骨と仙骨のつなぎ目の均衡が崩れていると、仙腸関節のダンパー作用が正しく機能しません。
歩行等の衝撃がもろに股関節や腰椎、さらには頚椎までも緩和されずに伝わります。日々の繰り返しで負担が蓄積されれば、痛みの発生リスクは計り知れません。
【運動連鎖と仙腸関節】
運動連鎖では、ほぼすべての動作で骨盤(仙骨)を介します。
とくに物を取るために屈む動作や背筋を伸ばす動作、階段を上るために足を上げ下げする動作では仙腸関節が中継点となり連鎖します。
仙腸関節に歪みがあると運動連鎖に誤差が生まれ、頚椎、胸椎や腰椎から股関節といったあらゆる部位に負担がかかります。痛みを生み出す要因となるのです。
本日の記事は以上となります。
ぜひ臨床の参考にして頂けると幸いです。
ALLアプローチ協会 代表 山口拓也