こんにちは。
ALLアプローチ協会の山口です。
今回のテーマは、
「東洋医学と感情」
です。
臨床で患者さんと話していると、
「最近ずっとイライラしている」
「仕事のことを考えすぎてしまう」
「不安や恐怖感が強い」
「落ち込んでから身体の調子も悪い」
など、
身体の不調だけでなく、感情やストレスの変化
を聞くことがあります。
東洋医学では昔から、身体と感情を完全に切り離して考えるのではなく、
「五臓と感情にはそれぞれ関係がある」
と考えてきました。
代表的なのが、
肝 → 怒り
心 → 喜び
脾 → 思い悩む
肺 → 悲しみ
腎 → 恐れ
という関係です。
これを東洋医学では、
五志(ごし)
と呼びます。
今回は難しい五行論を覚えるのではなく、
「どんな感情が、どの臓と関係すると考えられているのか?」
というところから、できるだけシンプルに解説していきます。
【1|東洋医学では「身体」と「感情」を一緒に見る】
まず知っておきたいのが、
東洋医学では、
身体の状態
と
感情の状態
を完全に別々のものとして考えないということです。
例えば、
強いストレスを受けてイライラする。
考え事が続いて食欲が落ちる。
大きな悲しみを経験して元気がなくなる。
強い恐怖によって身体がこわばる。
このように、実際の日常生活でも感情が変化すると身体にもさまざまな反応が起こります。
東洋医学では、この感情を大きく分類して、
怒・喜・思・悲・恐
という5つで捉えます。
そして、それぞれを五臓に対応させています。
【2|「肝」と関係する感情は怒り】
まずは、
肝 × 怒
です。
東洋医学では、
怒り・イライラ
などの感情を「肝」と関連づけます。
例えば、
仕事で強いストレスを感じる。
言いたいことを我慢し続ける。
思い通りにいかずイライラする。
感情が高ぶって興奮する。
こうした状態です。
東洋医学で肝は、
「気の流れをスムーズにする」
働きに関係すると考えられています。
そのため、精神的なストレスなどによって気の流れが滞った状態を、
肝気鬱結(かんきうっけつ)
と表現することがあります。
反対に、怒りが強くなると、気が上へ向かうとも考えます。
つまり、
ストレス → イライラ → 肝
というのは、東洋医学では非常に代表的な組み合わせです。
「最近イライラしている」という情報も、東洋医学では身体を見るための一つの材料になるわけです。
【3|「心」と関係する感情は喜び】
続いて、
心 × 喜
です。
「喜びなら良いのでは?」
と思うかもしれません。
もちろん、普通に嬉しいことや楽しいことが問題という意味ではありません。
東洋医学でポイントになるのは、
感情が極端になった状態
です。
興奮しすぎる。
気持ちが高ぶり続ける。
落ち着かない。
感情の起伏が激しくなる。
こうした「喜・興奮」に関係する状態を、
心
と結びつけて考えます。
東洋医学では心は、
精神活動を統括する「神(しん)」
と深く関係するとされています。
そのため、
精神状態・意識・睡眠
などを考える際にも「心」は重要な位置づけになります。
五志では、
心 → 喜
と覚えておきましょう。
【4|「脾」と関係する感情は考えすぎ】
セラピストが覚えておくと面白いのが、
脾 × 思
です。
「思」とは、
考える・思い悩む
といった意味です。
例えば、
仕事のことが頭から離れない。
同じことを何度も考える。
将来についてずっと悩んでいる。
心配事が続いている。
こうした状態です。
東洋医学では、
考えすぎることは「脾」と関係する
と考えます。
脾は東洋医学において、
食べたものから必要なものを取り込み、全身へ運ぶ
働きに関係するとされています。
そのため東洋医学では、
「考えすぎて食欲がない」
「悩み事が続いて胃腸の調子も悪い」
といった状態を見るときに、
脾と「思」の関係
を考えることがあります。
つまり、
考えすぎ・思い悩み → 脾
という組み合わせです。
現代人には比較的イメージしやすい関係ではないでしょうか。
【5|「肺」と関係する感情は悲しみ】
次は、
肺 × 悲
です。
東洋医学では、
悲しみ・憂い
などの感情を肺と関連づけます。
例えば、
大切な人との別れ。
大きな喪失。
強い悲しみ。
長期間続く落ち込み。
などです。
深く悲しんでいるとき、
ため息が増える。
声が小さくなる。
胸を閉じるような姿勢になる。
活動する気力が低下する。
といった変化がみられることもあります。
東洋医学では、悲しみが過度になると、
「気を消耗する」
と考えます。
そして「気」と深く関係する五臓として、
肺
を重要視します。
そのため、
悲しみ・憂い → 肺
という対応になります。
【6|「腎」と関係する感情は恐れ】
最後は、
腎 × 恐
です。
東洋医学では、
恐怖・強い不安
などを「腎」と関連づけます。
例えば、
強い恐怖を感じる。
将来への不安が強い。
何かに怯えている。
恐怖によって身体が動かなくなる。
といった状態です。
強い恐怖を感じたとき、
「足がすくむ」
「腰が抜ける」
という表現をすることがあります。
東洋医学では、恐怖によって、
「気が下へ向かう」
と考えます。
そして、この「恐」に対応する五臓が、
腎
です。
そのため、
恐れ・強い不安 → 腎
という組み合わせで整理します。
【7|五臓と感情をシンプルに覚える】
ここまでを一度まとめます。
東洋医学の「五志」は、
肝
怒り・イライラ
心
喜び・興奮
脾
考えすぎ・思い悩み
肺
悲しみ・憂い
腎
恐れ・不安
と整理できます。
まずは、
肝=怒
心=喜
脾=思
肺=悲
腎=恐
この5つを覚えるだけでも十分です。
難しい五行論から入るより、
「感情から五臓を覚える」
と理解しやすいと思います。
【8|ストレス=すべて「肝」ではない】
東洋医学を少し勉強すると、
「ストレス=肝」
と考えやすくなります。
確かに、
イライラ。
怒り。
抑圧。
精神的な緊張。
などは「肝」と関連づけて考えることが多いです。
しかし、ストレスによって現れる感情は人によって異なります。
ある人は、
イライラする。
別の人は、
ずっと考え込む。
また別の人は、
悲しくなる。
あるいは、
強い不安や恐怖を感じる。
同じ「仕事のストレス」でも、
怒 → 肝
思 → 脾
悲 → 肺
恐 → 腎
というように、東洋医学的な見方は変わります。
そのため、
ストレスがあるから肝を見る
ではなく、
ストレスによって「どんな感情」が強くなっているのかを見る
という考え方の方が、五志を理解しやすくなります。
【9|感情は「悪いもの」ではない】
ここも非常に重要です。
東洋医学では、
怒ること自体が悪い
悲しむこと自体が悪い
恐れること自体が悪い
と考えているわけではありません。
怒ることもあります。
喜ぶこともあります。
悩むこともあります。
悲しむこともあります。
怖いと感じることもあります。
どれも人間にとって自然な感情です。
東洋医学で問題として考えるのは、
感情が強すぎる
あるいは
長期間続いている
ような状態です。
つまり、
感情の種類だけではなく「程度」と「持続」も見る
ということです。
【10|「怒っている=肝臓が悪い」ではない】
五志を勉強するときに、一番注意してほしいポイントがあります。
それは、
東洋医学の「肝・心・脾・肺・腎」と、現代医学の臓器を完全に同一視しない
ことです。
例えば、
「怒りっぽいから肝臓が悪い」
「悲しんでいるから肺が悪い」
「怖がりだから腎臓が弱い」
という意味ではありません。
東洋医学では、
肝・心・脾・肺・腎を、現代医学とは異なる独自の機能体系として捉えています。
その中に、
感情との対応関係
も含まれているわけです。
そのため五志は、病気を診断するための単純な対応表として使うのではなく、
東洋医学で身体と感情をどう捉えているのかを理解するための考え方
として整理することが大切です。
【まとめ|ストレスを見るなら「どんな感情が出ているか?」】
今回は、
東洋医学と感情
をテーマに、五臓と五志の関係を解説しました。
もう一度整理すると、
怒り・イライラ → 肝
喜び・興奮 → 心
考えすぎ・思い悩み → 脾
悲しみ・憂い → 肺
恐れ・不安 → 腎
です。
ポイントは、
「ストレス=肝」だけで終わらせないこと。
同じストレスを受けても、人によって現れる感情は違います。
イライラするのか。
考え込むのか。
悲しくなるのか。
不安や恐怖が強くなるのか。
東洋医学では、そうした、
「ストレスによって何を感じているのか?」
まで含めて身体を捉えていきます。
まずは難しく考えず、
肝=怒
心=喜
脾=思
肺=悲
腎=恐
この5つから覚えてみてください。
五行や東洋医学を学び始めたばかりの方でも、ここを理解すると五臓と感情の関係がかなり整理しやすくなると思います。
ALLアプローチ協会
代表 山口拓也
























