みなさん、こんにちは。
ALLアプローチ協会 代表 山口拓也です。
本日も当協会の公式ブログをお読みいただきありがとうございます。
本日もセラピストや治療家の皆さんに臨床で使えるヒントやアイデアをお伝えしていきますね。
さて、今回のテーマは「内臓治療に必要な腎臓の知識」です。
前回は内臓治療において最も必要な肝臓についてご紹介していきましたが、腎臓も内臓治療では非常に重要になってきます。
ですから今回も腎臓の「基礎解剖生理から腎臓の不調が身体にどのように影響するか」までをご紹介していきます。
【概要・解剖】
腎臓は大きさ長さ12cm、幅7cm、厚さ3cmの臓器です。
(位置;左腎臓)
◆前側
上端:第9肋骨
下端:臍の1〜2cm上方
◆後面
上端:T11
下端:L3
腎盂:L1
【右腎臓】
◆前側
上端:第9肋骨
下端:臍の高さ
◆後面
左腎臓より1~1,5cm低い位置
だいたいですが、腎臓は腸骨より、左が5cm上方、右が4cm上方にあり、それぞれ脊柱から6cm外側に位置しています。
【腎筋膜】
腎筋膜には前層と後層があり、腎臓の上方外側(脊柱前面T12〜L1の高さ)で合流します。
腎筋膜後層は腰方形筋と大腰筋を覆い、脊柱の前外側に付着します。
腎筋膜前層は腹膜とトルツ筋膜に隣接しており、左側では広い範囲でトルツ筋膜と関係し、腎臓、腎門、椎体前側にある脈管を覆います。
またどちらの層も副腎を囲み、副腎の上方で合流し、横隔膜に付着します
*トルツ筋膜とは、腎臓と後面の腹膜をつなぐ筋膜です。
【腎臓と繋がっている器官】
◆後面
・横隔膜と内側・外側弓状靱帯
・胸膜
・第11〜12肋骨
・大腰筋、腰方形筋、腹横筋(DFL)
・肋下神経、腸骨下腹神経、腸骨鼠径神経
・グランフェルト三角(第12肋骨、固有背筋、内腹斜筋よって囲まれる場所)
◆前側
①右腎臓とつながっている組織
・肝臓
・肝十二指腸間膜
・右結腸曲
・横行結腸間膜
・十二指腸下降部
・上行結腸
◆左腎臓
・脾臓
・胃
・膵臓
・十二指腸空腸曲
・空腸
・左結腸曲
【運動生理学】
◆可動力
可動力を推進するのは横隔膜で、息を吸うとき腎臓は約3〜4cm尾側に移動する。
また息を吸うとき、上端は前に押し出され、さらに腎臓は尾側・外側に移動する(車のワイパーのような動き)ほか、外旋もします。
【生理学】
・体液・電解質の調節
・酸塩基平衡の調節
・尿素、尿酸、クレアチニン、毒素の排出
・血圧の調整(レニンアンジオテンシンーアルドステロン系)
・ホルモンの産生(エリスロポエチン、レニン、プロスタグランジンなど)
・ペプチドホルモンの分解
【腎臓に負担をかける要因】
①右腎臓の下垂の問題
主に肝臓と上行結腸が原因です。
また右腎臓は左腎臓より下垂しやすいです。
理由としては、肝臓という大きな臓器が、下に圧迫しやすい。
トルツ靭帯が左より弱い。
左結腸曲の方が強く固定されている。
【下垂の程度による症状】
軽度:尾側への下垂、肋下神経の刺激により、肋骨下部の領域で鈍い疼痛、もしくは肋骨下部から臍に向けて鋭い痛みが走ります。
中程度:腎臓が尾側、外側方向に移動し、外旋が深まり、下端が前方に動きます。(大腰筋が代償)
また、陰部大腿神経、外側大腿皮神経、腸骨鼠径神経、腸骨下腹神経も刺激されます。
そのことから、刺激された神経の支配領域に応じて、鼠径部、股関節外側、大腿内外側に痛みが生じます。
重度:下端が尾側・内側方向に移動し、内旋します。(脈管と尿管に引っ張られるため)
さらに大腿神経が刺激され、膝の痛み(特に屈曲)が生じます。
【腎臓の負担が続くと?】
腎臓は体内の濾過機能として働きますが、並外れた予備能力を持ち。腎臓は1つしかなくても健康に生きられると言われています。
つまり代償能力が大きいことから、腎臓から直接起こる問題は少なく、連鎖反応による体性症状を引き起こすことが多いです。
腎臓の下垂はまず大腰筋に影響を与え、大腰筋上にある腰神経叢(肋下神経、腸骨鼠径神経、腸骨下腹神経)を刺激します。
または、腎臓のうっ血もこれらの神経を刺激します。
このことから、鼠径部、大腿外側に痛みが生じやすく、このような症状は変形性股関節症、転子滑液包炎と間違えられやすいです。
そのほかの症状としては、
・多尿、早朝や夜間に激しい喉の渇き
・呼吸困難をともなう腹部に不快感
・横隔膜下、骨盤内の痛み
・起床後すぐ消失する下部腰椎付近の痛み
・咳、くしゃみ、長時間座位、立位で出る下部腰椎付近の痛み
・歯肉炎、口内炎などの口腔のトラブル
・体を丸めると楽になる胃や下部肋骨付近の痛み
・L1〜L2が支配する領域の痛み(大腿後面、下腿後面)
などです。
【腎臓と慢性腰痛】
原則的に内臓は疲労すると重くなる性質があります。
ですから腎臓は疲労してくると、重くなって下垂してきます。
ずれて元の位置から逸脱すると、腎臓とつながりのある筋膜を引っぱってしまうのです。
つまり、腎臓が下垂すると大腰筋や腰方形筋は腎臓と膜でも直接つながっているので、前方向に大腰筋や腰方形筋が引っ張るようにテンションがかかってきてしまいます。
そうなると引っ張られるのでピンと大腰筋は緊張した状態になり、大腰筋が付着している腰椎(腰の背骨)を前に引っ張ってしまい、反り腰になって腰痛が生じてきます。
また腰方形筋であれば、片一方の肋骨を下垂させて、体幹のアライメントを崩し、腰痛が生じます。
もしこれを読んでいるあなたが、筋・筋膜治らない腰痛や股関節痛で悩んでいるなら、ぜひ腎臓を評価してみてください。
では、本日はこれで以上となります。
本日も当協会の公式ブログをお読みいただきありがとうございます。
ALLアプローチ協会 代表 山口拓也