おはようございます。
All アプローチ協会 関東支部長 鈴木 正道です。
本日も当協会のメルマガをご覧いただき
ありがとうございます。
今回は、理学療法士・作業療法士・柔道整復師の方々へ向けて
下肢外側の痺れに対する筋膜・運動連鎖アプローチについて
お伝えさせていただきたいと思います。
まず、筋・筋膜・運動連鎖アプローチとはなんなのか
今まで様々な勉強会に参加してきましたが、
○○筋膜リリース
○○モビライゼーション
〇〇ストレッチ
○○法
○○式
など
様々な方法論がこの治療業界には飛び交っています。
それぞれの方法や理論を考案した人は本当に天才だと思います。
しかし、人に教えるために枠組みを絞る必要があったためか、
それぞれの方法は、何かの分野に特化してしまっています。
関節なら関節・筋膜リリースであれば筋膜・足底板であれば力学・連鎖
しかし、人の体はどれか一つだけをアプローチすることは困難です。
同時に多くの条件を満たし、目的とする問題を解消することが求められます。
少なくとも、
組織学的に
力学的に
神経学的に
問題を解決できていなければ症状の戻りに悩む頻度は多くなります。
今回は左下肢外側の痺れに対してのアプローチの一例をご紹介したいと思います。
患者が痺れを訴えている領域は
左の下臀神経
後大腿皮神経
総腓骨神経→浅腓骨神経→中間足背被神経
領域に痺れを訴えている。
そもそも痺れがどういった機序で発生しているかまず仮説・評価
↓
組織学的に筋・筋膜・神経がどこで痺れを起こしているのか評価
↓
同時に姿勢やアライメントからどうなっているか?
上記を評価することでどの筋・筋膜にストレスがかかっているか、どの神経が圧迫、もしくは牽引ストレスを受けているか当たりをつけていきます。
この領域で痺れの原因になりやすい領域は
L4/L5椎間関節 L5/S1 椎間関節
梨状筋
大腿二頭筋短頭周囲の滑走性
腓骨頭のアライメント
腓骨筋・長指伸筋・前脛骨筋の筋・筋膜
短指伸筋起始部
など
今回のケースは
骨盤周囲の評価では痺れの改善は若干でしたが、
左の長指伸展筋 前脛骨筋の起始部の筋硬結が緩んでいる時が
顕著に痺れの訴えを改善する評価結果となりました。
この前脛骨筋・長指伸展筋にフォーカスして
筋・筋膜・筋アライメント・神経・関節・骨アライメント・運動連鎖の条件を整えながらアプローチ。
まず前脛骨筋の起始部の筋硬結がなぜ起こっているか評価
立位アライメント:
骨盤左回旋・左足関節底屈内返
ということは、
運動連鎖で考えると股関節は屈曲内転、内旋膝関節は下腿が外旋、脛骨に対して大腿骨が内旋していることになります。
◆筋肉の状態
後脛骨筋短縮
外側ハムストリングス短縮(大腿二頭筋)
◆骨アライメント
腓骨が下制と外旋
◆神経の考察
浅腓骨神経領域に痺れをきたしているが、筋・筋膜の反応は深腓骨神経領域で反応あり。
◆歩行中の連鎖で考察
前脛骨筋はローディングレスポンスで短縮、プレスイングで伸長する。
長指伸筋はイニシャルコンタクトで伸長ターミナルスタンスで短縮する。
以上の条件から考えると、
立位アライメントで骨盤が左回旋と足部が底屈内反していることから
・ポイント1
歩行周期で左のターミナルスタンスにおける背屈外反が困難
→後脛骨筋伸長、長趾伸筋短縮
・ポイント2
ローディングレスポンスにおける背屈内反が困難
→前脛骨筋短縮、長腓骨筋伸長
これらを解決できるように、前脛骨筋を収縮する制限・長趾伸筋を収縮する制限にアプローチする
どちらを優先するかの考察では、
痺れ自体を起こしているのは浅腓骨神経領域で、
腓骨が下制外旋しているとともに、下腿の内反も伴いながら
近位脛腓関節が離開していることで
総腓骨神経が牽引・伸長刺激を受けていることが
痺れの原因としました。
そのため、ターミナルスタンスで股関節伸展と足関節背屈外反から
腓骨のアライメントを整復できるようになること
(長趾伸筋が短縮できるようになること)が優先される。
◆アプローチ
アナトミートレインによる筋・筋膜連結を考えると
後脛骨筋の伸長性を得るためには連結してる
腓骨筋の緊張や腓骨筋のアライメントをを整える必要がある。
今回の症例の場合はディープフロントラインと
ラテラルラインの関係性を考慮しながら、
腓骨のアライメントを近位・遠位から整復圧をかけ、
同時に内側縦アーチのアライメントも徒手的に整えていくことで
後脛骨筋のゆるみと、足関節の背屈外反の可動域をえることができた。
左足関節の背屈・外反の可動域が得られることで
下腿・大腿の回旋ストレスも改善し、
腓骨の挙上内旋、下腿の内旋の運動連鎖の影響で
大腿二頭筋の伸張性も得られ、総腓骨神経―浅腓骨神経領域の
牽引・伸長ストレスが改善し、痺れの訴えの改善につながった。
このメインのストレスの改善により、下腿よりも近位、臀部周囲の痺れの訴えも改善につながっている。
これが、連鎖の影響を考慮しないで考察していると、
下腿前区画の筋硬結のリリースをすれば痺れが取れるとなってしまうが、
それでは一時的な筋のゆるみとなり
筋・筋膜の硬結は元に戻ってしまうことが多い。
組織、力学、神経学を考慮してアプローチすることで
一つ一つのアプローチの質を高めていけるようにしましょう。
今回は反対側の下肢の運動連鎖の影響は省いていますが、もちろん反対側下肢
体幹の影響も考慮してアプローチしていきましょう。
最後までお付き合いいただき、ありがとうございます。
本日も良い時間をお過ごしください。
all アプローチ協会 鈴木 正道