その他

胃の内臓アプローチ|胃リリースで知っておきたい解剖学

こんにちは。
ALLアプローチ協会の山口です。

今回は、胃に対する内臓アプローチについてお話しします。

「胃リリース」と聞くと、

・下がった胃を元の位置へ戻す
・硬くなった胃を柔らかくする
・胃の癒着を剥がす

このようなイメージを持つ方もいると思います。

しかし、腹部の上から手を当てたとき、本当に胃だけを触っているのでしょうか?

今回は、胃の位置、腹膜、靱帯、横隔膜、周辺臓器、神経支配を踏まえて、胃への内臓アプローチを具体的に考えていきます。

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■1.胃の位置を正確にイメージできますか?
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胃は、食道と十二指腸の間にある袋状の臓器です。

主に心窩部から左季肋部に位置し、その大部分は身体の正中線より左側にあります。

胃は、解剖学的に次の部位に分けられます。

・噴門
・胃底
・胃体
・幽門部

食道から胃へ入る部分が「噴門」です。

噴門の左上方に膨らんでいる部分が「胃底」。

胃の中央部が「胃体」。

十二指腸へ向かって細くなる部分が「幽門部」です。

胃の上縁にある短いカーブを「小彎」、下縁にある長いカーブを「大彎」と呼びます。

ここで重要なのは、胃は身体の表面から見て、きれいな縦向きに存在しているわけではないということです。

噴門は比較的左上方にあり、幽門は右側へ向かいます。

ただし、胃の形や位置には個人差があります。

体格、姿勢、呼吸、胃の内容量などによっても形は変化します。

空腹時と食後でも、胃の大きさや周囲との位置関係は同じではありません。

そのため、

「剣状突起の下を押せば胃に触れられる」

と単純に考えることはできません。

噴門付近を狙っているのか。

胃体部を狙っているのか。

大彎側を狙っているのか。

幽門部を狙っているのか。

部位によって、手を置く場所も、周囲に存在する組織も異なります。胃は食道と小腸の間に位置する、消化管の中で大きく拡張した筋性臓器です。

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■2.みぞおちから胃までに何があるのか?
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みぞおちへ手を置いたとき、手のすぐ下に胃があるわけではありません。

身体の表面から胃へ向かって、おおまかには次の組織があります。

・皮膚
・皮下組織
・腹直筋鞘
・腹直筋
・腹横筋膜
・腹膜外脂肪
・壁側腹膜
・腹膜腔
・臓側腹膜
・胃壁

さらに、心窩部の右寄りでは、胃の前面に肝臓の左葉が重なることがあります。

上方では、剣状突起や肋骨弓もあります。

そのため、みぞおちの硬さとして感じているものが、

・腹直筋の防御性収縮
・肋骨弓の硬さ
・肝臓の左葉が重なる領域
・腹膜周辺の緊張
・呼吸を止めたことによる腹圧上昇

という可能性もあります。

特に、施術者が急に深く押すと、クライアントは腹部を守るために腹直筋を収縮させます。

その収縮を「胃が硬い」と判断してしまうと、さらに強く押すことになります。

すると、腹筋はさらに緊張します。

これでは、胃周辺の状態を評価しているのではなく、施術者の圧に対する防御反応を触っているだけです。

腹部へ触れるときは、最初から深部へ指を入れるのではなく、

1.皮膚の動き
2.腹壁の緊張
3.呼吸に伴う腹部の動き
4.肋骨弓の可動性
5.不快感や圧痛の有無

を順番に確認します。

「胃を触る」より先に、胃までの間にある組織を区別することが必要です。

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■3.胃は4つの膜状組織で周囲と連結する
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胃は腹腔内に浮いているわけではありません。

腹膜が折り返してできる膜状の構造によって、周辺の臓器と連続しています。

胃リリースを考えるうえで重要なのが、次の4つです。

・小網
・胃脾間膜
・胃横隔間膜
・大網につながる胃結腸間膜

まず、小彎側には「小網」が付着します。

小網は、胃の小彎と十二指腸の近位部から肝臓へ続く二重の腹膜です。

小網のうち、肝臓と胃をつなぐ部分を「肝胃間膜」と呼びます。

つまり、小彎側は肝臓と解剖学的に連続しています。

そのため、小彎側の可動性を考えるときは、胃だけでなく、肝臓、十二指腸、横隔膜の動きも確認する必要があります。小網は胃の小彎および十二指腸近位部と肝臓を連結しています。

胃底部から脾臓へは「胃脾間膜」が続きます。

この中には、短胃動脈や左胃大網動脈などが走行します。

胃底部の左側を評価するときに、脾臓との位置関係を無視することはできません。

また、胃底部から横隔膜へ向かう腹膜の連続は「胃横隔間膜」と呼ばれます。

胃底部は、左横隔膜ドームのすぐ下に位置します。

そのため、胃底部周辺を狙う場合は、左の下位肋骨と横隔膜の動きも重要になります。

大彎から下方へは、大網が垂れ下がります。

大網は大彎から下降し、折り返して横行結腸へ付着します。

大彎と横行結腸をつなぐ部分は、胃結腸間膜として扱われます。

したがって、大彎側へアプローチするときは、横行結腸との位置関係も考える必要があります。大網は胃の大彎から垂れ下がり、前方から腸管を覆った後、横行結腸へ付着します。

「胃をリリースする」と言っても、

・肝臓側との連続を見るのか
・脾臓側との連続を見るのか
・横隔膜側を見るのか
・横行結腸側を見るのか

によって、触れる方向は異なります。

ただ胃を上下左右に動かすのではなく、どの腹膜連結を評価しているのかを明確にすることが大切です。

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■4.胃の後ろには何があるのか?
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胃の後方には、「網嚢」という腹膜腔があります。

網嚢は小嚢とも呼ばれ、胃と小網の後方に位置する空間です。

さらに、その後方には次の組織があります。

・膵臓
・脾臓
・左腎
・左副腎
・横隔膜
・横行結腸間膜
・脾動脈

これらは、胃床と呼ばれる胃後面の支持関係をつくります。

ここで重要なのは、腹臥位や強い前方圧を加えたとき、胃の後方には膵臓や大血管に近い領域があるということです。

胃を後方へ強く押し込めばよいわけではありません。

また、膵臓は胃のすぐ後方に位置します。

膵臓や周辺組織に炎症がある場合、上腹部痛や背部痛が現れることがあります。

そのような状態を、

「胃の裏側が硬い」

「胃の癒着が強い」

と触診だけで判断することはできません。

強い上腹部痛と背部痛、嘔吐、発熱などがある場合は、施術対象として考える前に、医療機関での評価が必要です。

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■5.胃底部と横隔膜は非常に近い
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胃と呼吸の関係を考えるとき、特に重要なのが胃底部です。

胃底部は、噴門より上方に膨らむ部分で、左横隔膜ドームの直下に位置します。

胃の中に入った空気は上方へ集まりやすく、立位では胃底部付近に「胃泡」が認められます。

胃底部の上には横隔膜があり、その上には左肺と心臓があります。

横隔膜が収縮すると、中央腱が下方へ移動します。

これに伴い、腹腔内臓器は下方および前方へ変位します。

つまり、吸気時に胃も呼吸性の移動をします。

ただし、胃だけが単独で上下しているのではありません。

肝臓、脾臓、横行結腸なども、横隔膜と腹圧の影響を受けます。

胃の呼吸性移動を評価するときは、左の下位肋骨へ手を当て、

・吸気で肋骨が外側へ広がるか
・左肋骨弓が前後に動くか
・腹部を過剰に固めていないか
・左右差があるか
・深呼吸で痛みが出ないか

を確認します。

左下位肋骨がほとんど動かない場合、最初から胃を深く押すのではなく、肋骨弓や呼吸の評価を優先します。

胃底部は肋骨の内側に位置するため、正面から強く押して直接つかめるような場所ではありません。

左肋骨弓の内側へ無理に指を入れると、痛みや防御性収縮が起こります。

胃底部周辺へのアプローチでは、強い圧よりも、左肋骨弓と呼吸運動を利用する方が安全です。

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■6.噴門と食道裂孔を混同しない
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胃リリースでは、「噴門を緩める」という表現が使われることがあります。

しかし、噴門と横隔膜の食道裂孔は同じ構造ではありません。

食道は胸腔から腹腔へ移動する際に、横隔膜の食道裂孔を通過します。

食道裂孔は主に横隔膜の右脚によって形成されます。

食道が横隔膜を通過した後、胃へ移行する部分が噴門です。

つまり、

・食道裂孔=横隔膜にある通過孔
・噴門=食道と胃の接合部

です。

体表から噴門を正確につまんだり、食道裂孔へ直接指を当てたりすることはできません。

心窩部へ触れながら感じているのは、

・腹壁
・剣状突起周辺
・肝左葉
・横隔膜前方部
・胃上部周辺

を含む複合的な反応です。

そのため、施術後に胸やけやみぞおちの圧迫感が変化したとしても、

「噴門を開いた」

「食道裂孔を正常な位置へ戻した」

と断定することはできません。

特に、逆流症状や食道裂孔ヘルニアが疑われる人に対して、腹部を強く押し込む施術は避けるべきです。

胸やけ、嚥下困難、食後の胸痛、慢性的な咳などが続く場合は、医療機関での評価が優先されます。

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■7.胃の出口は幽門と十二指腸につながる
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胃の出口にあたるのが幽門です。

幽門は右上腹部方向へ向かい、その先で十二指腸へつながります。

十二指腸は膵頭部を囲むようなC字型をしており、幽門から始まります。

この位置関係から、幽門部の動きを考える場合は、

・肝臓
・胆嚢
・十二指腸
・膵頭部
・小網
・横行結腸

との関係を無視できません。

みぞおちの中央だけを触っていても、幽門部を十分に評価しているとは限りません。

幽門は、胃の内容物を十二指腸へ送り出す部分です。

そのため、食後すぐに胃を強く圧迫する施術は適していません。

食後は胃が拡張し、内容物が入っています。

施術を行う場合は、食後すぐを避け、腹部膨満感、吐き気、逆流症状がないかを確認します。

また、右上腹部の痛みをすべて幽門部の問題と考えてはいけません。

右上腹部には、肝臓、胆嚢、十二指腸、結腸などがあります。

食後に強い右上腹部痛が出る、発熱や嘔吐を伴う、黄疸がある場合は、施術ではなく医療機関への受診が必要です。

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■8.胃の神経支配と背中の症状
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胃は自律神経の支配を受けています。

副交感神経は、主に迷走神経から入ります。

迷走神経は食道に沿って下降し、食道裂孔を通過した後、胃の前面と後面へ分布します。

交感神経は、胸髄由来の内臓神経を経由し、腹腔神経叢を通って胃へ分布します。

一般に胃の交感神経性入力は、主に上位から中位胸髄領域と関係します。

そのため、胃由来の内臓痛が、心窩部だけでなく背部に感じられる場合があります。

ただし、

「胸椎が硬いから胃が悪い」

「胃を緩めれば胸椎が治る」

と単純に結びつけることはできません。

胸椎の可動性低下には、

・椎間関節
・肋椎関節
・筋緊張
・呼吸パターン
・長時間の座位
・疼痛に対する防御姿勢

など多くの要因があります。

臨床では、胃周辺へ触れる前後で胸椎伸展や回旋が変化するかを確認します。

変化があったとしても、それは胃だけではなく、

・腹壁の緊張低下
・呼吸の変化
・肋骨運動の変化
・痛みに対する警戒の低下

などによって生じた可能性があります。

「胃の神経支配を知ること」と「触診で胃の病態を診断すること」は別です。

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■9.胃と左肩を安易に結びつけない
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「胃が悪いと左肩が痛くなる」

という話を聞いたことがあるかもしれません。

ここでは、横隔膜と横隔神経の解剖を理解する必要があります。

横隔神経は、主に第3〜第5頸神経から構成され、横隔膜の運動を支配します。

また、横隔膜中央部の感覚にも関係しています。

横隔膜やその周辺の腹膜が刺激されると、肩周辺に関連痛が生じることがあります。

これは、横隔神経由来の感覚入力と、肩周辺の皮膚感覚が頸髄レベルで重なることが一因と考えられています。横隔膜の刺激に伴う肩への関連痛は、臨床報告でも認められています。

ただし、これは、

「左肩が硬いから胃リリースをする」

という意味ではありません。

横隔膜周辺の刺激による関連痛は、腹腔内出血、炎症、術後、胸腹部疾患などでも起こる可能性があります。

左肩痛に加えて、

・突然の胸痛
・息苦しさ
・冷汗
・吐き気
・強い腹痛
・めまい

などがある場合は、施術を行わず、緊急性を含めて医療機関への相談を優先します。

通常の肩こりと、内臓由来の関連痛を触診だけで区別することはできません。

胃と左肩の関係は興味深い解剖学ですが、安易な施術の根拠にしてはいけません。

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■10.胃リリースで実際に評価するポイント
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胃周辺へアプローチする前に、次の項目を確認します。

【1.食事との関係】

・現在は食後か、空腹時か
・食後何分、何時間で症状が出るか
・脂質の多い食事で悪化するか
・食事量によって症状が変わるか
・胸やけや逆流があるか

食後すぐは胃が拡張しているため、深い圧迫は避けます。

【2.症状の位置】

・心窩部か
・左季肋部か
・右上腹部か
・背部まで広がるか
・局所的か、広範囲か

症状の場所だけで胃と判断せず、他の臓器や筋骨格系の可能性も考えます。

【3.呼吸】

・左下位肋骨が広がるか
・吸気で腹部が動くか
・呼吸時に痛みが出るか
・呼吸を止めて腹部を固めていないか

【4.腹壁】

・軽い接触でも防御性収縮が出るか
・左右で緊張差があるか
・反跳痛がないか
・強い圧痛がないか

【5.胸郭と胸椎】

・胸椎伸展
・胸椎回旋
・肋骨弓の左右差
・肩の挙上時に上腹部が引きつらないか

施術後は、施術前と同じ項目を再評価します。

例えば、

・深呼吸のしやすさ
・左下位肋骨の拡張
・胸椎の伸展
・体幹回旋
・心窩部の圧迫感

を比較します。

「柔らかくなった気がする」という施術者側の感覚だけではなく、動きと本人の症状を確認します。

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■11.胃リリースはどこから行うのか?
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胃周辺へ直接触れる前に、私は次の順番で確認します。

①腹壁

最初に、心窩部から左上腹部へ軽く手を置きます。

深く押さず、呼吸に伴う腹壁の上下動を確認します。

腹直筋が強く収縮している場合は、胃へ到達しようとせず、圧を弱めます。

②左肋骨弓

胃底部の多くは左肋骨弓の内側にあります。

そのため、胃底部を正面から押すのではなく、左下位肋骨の外側への拡張を確認します。

吸気で広がりにくい場合は、肋骨弓周辺の筋や呼吸パターンへアプローチします。

③小彎側と肝臓側

小彎は小網を介して肝臓へ連続します。

心窩部中央からやや右側に強い緊張がある場合、胃だけでなく肝左葉、肋骨弓、横隔膜の影響を考えます。

④大彎側と横行結腸側

大彎からは大網が下方へ続き、横行結腸と関係します。

左上腹部から臍上部にかけての緊張を、すべて胃の問題と判断しないことが重要です。

便秘や腹部膨満がある場合は、結腸の影響も考えます。

⑤幽門・十二指腸側

胃の出口は右側へ向かいます。

そのため、幽門部を考える場合は、心窩部中央だけでなく右上腹部の状態も確認します。

ただし、胆嚢や肝臓に由来する症状との区別は触診だけではできません。

胃リリースとは、胃を一方向へ押し込む手技ではありません。

胃の各部位と、その周囲にある解剖学的構造を分けて評価することが重要です。

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■12.胃を直接触らなくても変化する理由
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胃底部は横隔膜の直下にあります。

小彎側は小網を介して肝臓へ続きます。

大彎側は大網を介して横行結腸へ続きます。

胃の後方には網嚢を挟んで膵臓などがあります。

この解剖学を考えると、胃周辺の症状に対して、胃だけを触る必要がないことが分かります。

例えば、左下位肋骨の動きが悪い場合は、横隔膜と肋骨弓を評価します。

胸椎が屈曲したまま動かない場合は、胸椎伸展と肋椎関節を評価します。

腹直筋が強く緊張している場合は、腹壁への刺激量を下げます。

右上腹部に緊張がある場合は、肝臓、小網、十二指腸との位置関係を考えます。

つまり、胃を直接触らなくても、

・左肋骨弓
・横隔膜
・胸椎
・腹壁
・肝臓周辺
・横行結腸周辺

へのアプローチ後に、心窩部の圧迫感や呼吸が変化することがあります。

これは抽象的な「身体はつながっているから」ではありません。

胃が腹膜や周辺臓器と具体的に連続しているためです。

ただし、施術による変化を「胃が正しい位置へ戻った」と断定することはできません。

手技によって胃の位置や癒着が修正されたかどうかは、体表からの触診だけでは確認できないからです。

臨床では、

「胃が戻った」

ではなく、

「左肋骨の吸気時拡張が改善した」

「心窩部の圧迫感が軽減した」

「胸椎伸展時の違和感が減った」

というように、確認できた変化を記録します。

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■13.胃への施術を避けるべきケース
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次のような症状がある場合は、胃リリースを行わず、医療機関での評価を優先します。

・突然発症した激しい腹痛
・時間とともに悪化する腹痛
・腹部が板のように硬い
・軽く触れただけでも強く痛む
・吐血
・黒色便
・繰り返す嘔吐
・発熱を伴う腹痛
・急激な体重減少
・食事や水分を取れない
・胸痛や強い息苦しさ
・黄疸
・腹部手術直後
・妊娠中の原因不明の腹痛

また、既往歴として、

・胃潰瘍
・消化管出血
・腹部大動脈瘤
・悪性腫瘍
・食道裂孔ヘルニア
・腹部手術
・抗凝固薬の使用

などがある場合は、状態を詳しく確認します。

セラピストが行う腹部へのアプローチは、胃疾患を診断したり治療したりするものではありません。

施術適応を見極め、必要なときに医療機関への受診を勧めることも重要です。

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■14.まとめ
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今回のポイントをまとめます。

・胃は噴門、胃底、胃体、幽門部に分かれる
・胃の大部分は心窩部から左季肋部に位置する
・胃の前には腹壁や肝左葉が重なることがある
・小彎は小網を介して肝臓と連続する
・胃底部は胃脾間膜を介して脾臓と関係する
・胃底部は左横隔膜ドームの直下に位置する
・大彎は大網を介して横行結腸と関係する
・胃の後方には網嚢、膵臓、左腎などがある
・噴門と横隔膜の食道裂孔は別の構造である
・胃の出口である幽門は十二指腸へ続く
・胃は迷走神経と交感神経の支配を受ける
・左肩痛を安易に胃の問題と判断してはいけない
・みぞおちの硬さが胃そのものとは限らない
・胃リリースでは、胃周辺の解剖学的構造を分けて評価する

胃リリースで大切なのは、胃を強く押すことではありません。

まず、胃がどこにあり、胃の前後左右に何があるのかを理解することです。

そのうえで、

・腹壁
・肋骨弓
・横隔膜
・小網
・肝臓
・脾臓
・横行結腸
・十二指腸

との位置関係を考えながら評価します。

今回の内容は、YouTubeでも詳しく解説しています。

文章では分かりにくい胃の位置や、実際に手を当てる場所、評価方法、施術の進め方についても解説していますので、ぜひ動画をご覧ください。

日々の臨床にお役立ていただければと思います。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

ALLアプローチ協会

山口 拓也

【副腎解剖学】副腎リリースの前に知るべき解剖学を徹底解説|セラピスト向け前のページ

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