こんにちは。
ALLアプローチ協会の山口です。
内臓アプローチを学んでいると、
肝臓
胃
腸
腎臓
などは比較的イメージしやすいと思います。
一方で、
「脾臓って、臨床でどう見ればいいの?」
と感じるセラピストは少なくありません。
脾臓は左上腹部のかなり深い位置にあり、直接イメージしにくい臓器です。
しかし解剖学的に見ると、
横隔膜
左下位肋骨
胃
左腎
膵尾部
結腸
脾動脈・脾静脈
など、多くの構造と関係しています。
さらに脾臓は、
血液の濾過
免疫機能
古くなった赤血球の処理
血小板の貯留
などにも関与する重要な臓器です。
だからこそ、
「脾臓を押せばいい」
という発想ではなく、
脾臓がどこにあり、何と接し、どのように呼吸や周囲組織の影響を受けるのか
を理解することが大切です。
今回は、
位置
↓
周囲臓器
↓
靱帯
↓
血管
↓
横隔膜・肋骨との関係
↓
評価
↓
アプローチ
という順番で、脾臓を解剖学から深掘りしていきます。
【1|そもそも脾臓とは?】
脾臓(spleen)は、
左上腹部
に位置する臓器です。
腹腔内では、
左横隔膜の下
胃の後外側
左腎の上外側
付近に位置しています。
形としては、
扁平な楕円形
あるいは、
握りこぶしほどの大きさ
と表現されることがあります。
脾臓は一般的な消化管の臓器とは異なり、
リンパ系・免疫系に関係する臓器
です。
血液中の細胞をチェックし、
古くなった赤血球の処理や免疫反応に関与します。
つまり脾臓は、
血液と免疫の両方に深く関わる臓器
と考えると理解しやすいでしょう。
【2|脾臓はどこにある?】
脾臓を臨床で考えるうえで、まず重要なのが位置です。
脾臓は一般的に、
第9〜11肋骨付近
の深部に位置します。
その長軸はおおむね、
第10肋骨
に沿うような向きになります。
つまり、
左下位胸郭の深部
に存在しているイメージです。
ここが大切です。
脾臓は腹部にある臓器ですが、
肋骨に守られている臓器
でもあります。
そのため脾臓を評価するときには、
腹部だけではなく、
左下位肋骨
胸郭
横隔膜
まで見ていく必要があります。
【3|脾臓の周囲には何がある?】
脾臓は単独で存在しているわけではありません。
周囲には、
横隔膜
胃
左腎
膵臓
結腸
などがあります。
解剖学的には、脾臓には周囲臓器との接触面が存在します。
代表的なのが、
胃面
腎面
結腸面
などです。
つまり脾臓を局所だけで見るのではなく、
周囲の臓器との位置関係
まで考えることが重要です。
例えば、
左上腹部に違和感があるからといって、
必ずしも脾臓そのものが原因とは限りません。
周囲には胃・腎・結腸・横隔膜などがあるため、
症状だけから臓器を決めつけない
ことが大切です。
【4|脾臓は「靱帯」で周囲とつながっている】
脾臓は腹膜によって覆われ、周囲と複数の腹膜性連結を持ちます。
代表的なのが、
胃脾間膜
脾腎間膜
です。
胃脾間膜は、
胃と脾臓
をつなぎます。
脾腎間膜は、
脾臓と左腎周囲
をつなぎます。
ここには血管も走行します。
つまり脾臓は、
単独で浮いている臓器ではなく、胃・腎・血管系と構造的につながっている
ということです。
セラピストとしては、
脾臓周囲の可動性を見るなら胃や左腎周囲も考える
という視点につながります。
【5|脾臓と膵臓の関係】
脾臓と関連が深い臓器の一つが、
膵臓
です。
膵臓は、
頭部。
体部。
尾部。
に分けられます。
そのうち、
膵尾部
は脾臓の近くまで伸びています。
つまり左上腹部では、
脾臓
+
膵尾部
+
胃
+
左腎
が非常に近い位置関係にあります。
このエリアを評価するときに、
「ここは脾臓」
と一つの臓器だけに限定して考えるより、
左上腹部という一つの解剖学的エリア
として見る方が臨床では使いやすいと思います。
【6|脾臓の血流は非常に豊富】
脾臓は、
血流が非常に豊富な臓器
です。
脾臓へ血液を送る代表的な血管が、
脾動脈
です。
脾動脈は、
腹腔動脈
から分岐します。
そして膵臓の上縁付近を走行しながら脾臓へ向かいます。
一方、脾臓から出る血液は、
脾静脈
へ流れます。
脾静脈は膵臓の後方を走行し、
上腸間膜静脈などと合流して、
門脈
の形成に関与します。
つまり脾臓は、
門脈系とも深く関係する臓器
です。
【7|脾臓の役割① 古くなった赤血球を処理する】
脾臓の代表的な働きの一つが、
血液の濾過
です。
血液中を流れている赤血球のうち、
古くなったものや変形したものなどを処理します。
脾臓の内部には、
赤脾髄
と呼ばれる領域があります。
ここでは血液成分の処理に関係する活動が行われます。
つまり脾臓は、
血液の状態をチェックするフィルター
のような役割を持っていると考えることができます。
【8|脾臓の役割② 免疫にも関係する】
もう一つ重要なのが、
免疫機能
です。
脾臓には、
白脾髄
と呼ばれる領域があります。
ここにはリンパ球などが存在し、
血液中の抗原に対する免疫反応に関与します。
脾臓は、
血液を介して侵入した異物に対応する免疫臓器
でもあります。
つまり、
脾臓=血液だけの臓器
ではありません。
血液。
免疫。
リンパ。
これらが交差する重要な臓器です。
【9|脾臓と横隔膜はかなり近い】
脾臓アプローチで特に重要なのが、
横隔膜との関係
です。
脾臓の上面は、
横隔膜
と接しています。
そのさらに上には、
左肺
があります。
つまり脾臓は、
腹腔内臓器でありながら、
横隔膜を介して胸郭とも非常に近い
位置にあります。
呼吸によって横隔膜が上下すると、
腹腔内臓器もそれに伴って位置変化します。
したがって脾臓を見るとき、
呼吸時に左下位胸郭がどう動くか
という評価は非常に重要になります。
【10|左下位肋骨が硬いなら脾臓だけを見ない】
例えば、
左第9〜11肋骨周囲が動きにくい。
左下位胸郭が吸気で広がらない。
このような所見があったとします。
すると、
「脾臓が硬いのでは?」
と考えたくなるかもしれません。
しかし実際には、
横隔膜
胸椎
肋椎関節
肋間筋
腹壁
胃
左腎
など、さまざまな構造が関係している可能性があります。
つまり、
左下位胸郭の硬さ=脾臓の問題
ではありません。
重要なのは、
そのエリア全体を解剖学的に見ること
です。
【11|脾臓と呼吸運動】
呼吸時、横隔膜が収縮すると、
ドームが下降します。
それに伴って、
腹腔内臓器も一定の範囲で動きます。
脾臓も例外ではありません。
吸気では横隔膜の下降に伴って、
脾臓も下方へ位置変化
します。
呼気では再び上方へ戻ります。
つまり、
脾臓は呼吸によって動く臓器
として捉えることができます。
そのため触診や評価を行う場合、
静止した状態だけではなく、
吸気・呼気でどう変化するか
を見ることがポイントになります。
【12|脾臓を見るなら「胸椎」も確認する】
脾臓は左下位胸郭の深部に位置します。
そのため胸郭全体の運動を考えるなら、
胸椎
も評価したいところです。
例えば、
胸椎回旋。
胸椎側屈。
胸椎伸展。
が制限されている場合、
肋骨運動や胸郭の拡張パターンが変化している可能性があります。
つまり、
脾臓周囲の動きを見るなら胸郭の土台となる胸椎も見る
ということです。
【13|脾臓を見るなら「胃」も見る】
脾臓の内側前方には、
胃
があります。
そして脾臓と胃は、
胃脾間膜
によって連続します。
そのため、
左上腹部を評価するときには、
脾臓と胃の位置関係
を理解しておく必要があります。
例えば、
左上腹部の圧痛や違和感があったとしても、
脾臓なのか。
胃なのか。
腹壁なのか。
肋骨なのか。
それだけでは判断できません。
だからこそ、
症状=臓器
と結びつけず、
解剖学的に周囲構造を整理することが重要です。
【14|脾臓を見るなら「左腎」も見る】
脾臓の後内側には、
左腎
があります。
脾臓と左腎周囲は、
脾腎間膜
を介して関係しています。
つまり、
左上腹部
左下位胸郭
左腎周囲
は、解剖学的にかなり近い領域です。
このため、
一つの臓器だけをターゲットにするより、
左側腹部から背部まで含めて評価する
という視点が大切です。
【15|「脾臓が悪いから肩が痛い」と単純化しない】
脾臓と左肩の関係として有名なのが、
Kehr徴候
です。
脾臓損傷などで腹腔内出血が起こり、横隔膜が刺激されると、
横隔神経を介した関連痛として、
左肩に痛み
が出ることがあります。
これは臨床上とても重要です。
ただし、
左肩が痛い=脾臓の問題
ではありません。
むしろ急な左肩痛に加えて、
腹痛。
外傷歴。
めまい。
冷汗。
全身状態の悪化。
などがある場合には、
施術対象として考えるのではなく、
医療機関での評価が必要な可能性
を考えます。
内臓アプローチを学ぶほど、
触ってはいけないケースを知ること
も重要です。
【16|脾臓は強く押す臓器ではない】
脾臓アプローチで特に注意したいのが、
強い直接圧を加える発想
です。
脾臓は血流が豊富で、
肋骨に守られた深部に位置しています。
そのため、
「脾臓を直接押し込んで緩める」
という考え方ではなく、
胸郭。
横隔膜。
周囲組織。
呼吸。
などを介して、
そのエリア全体の動きを評価する
方が安全性の面でも重要です。
【17|僕なら脾臓周囲をこう評価する】
実際に脾臓周囲を見るなら、
まず局所から入りません。
①呼吸
吸気時に左下位胸郭が広がるか。
右と比べて大きな左右差がないか。
②胸郭
第9〜11肋骨付近の動き。
前方。
側方。
後方。
を確認します。
③胸椎
回旋。
側屈。
伸展。
を確認します。
④横隔膜
呼吸に伴う下位胸郭の拡張がどう出ているか。
⑤腹部
左上腹部だけでなく、
胃周囲。
左側腹部。
腹壁。
なども確認します。
⑥症状との関係
介入後、
呼吸。
体幹回旋。
肩関節挙上。
疼痛。
などが変化したかを再評価します。
このように、
脾臓だけを見るのではなく、脾臓が存在する環境を見る
ことが重要です。
【18|脾臓アプローチは「臓器を動かす」ことが目的ではない】
内臓施術というと、
臓器を動かす
というイメージを持つ方もいます。
しかし僕は、
「臓器そのものを動かすこと」が目的ではない
と思っています。
大切なのは、
その人の、
呼吸
胸郭運動
体幹運動
腹壁の緊張
症状
などがどう変化するかです。
脾臓という解剖学的視点を使いながら、
患者さん全体の機能を評価する。
そのための一つの入り口として考えると、内臓アプローチはより臨床的になります。
【19|アプローチ後は必ず再評価する】
脾臓周囲へアプローチしたあと、
「柔らかくなりました」
だけで終わらないことも重要です。
最初に問題があったものをもう一度確認します。
例えば、
深呼吸
体幹回旋
側屈
肩関節挙上
左下位胸郭の拡張
などです。
そこで変化があれば、
今回介入したエリアが症状や動作に関係していた可能性を考えられます。
つまり、
評価
↓
仮説
↓
介入
↓
再評価
です。
内臓アプローチでも、この原則は変わりません。
【まとめ|脾臓を見るなら「左上腹部全体」を見る】
今回は、
脾臓アプローチ
について解剖学から整理しました。
脾臓は、
左第9〜11肋骨付近の深部
に位置し、
横隔膜
胃
膵尾部
左腎
結腸
などと近接しています。
さらに、
胃脾間膜
脾腎間膜
などを介して周囲と連続します。
血管では、
脾動脈
脾静脈
が重要で、
脾静脈は門脈系にも関係します。
そして機能としては、
血液の濾過
古い赤血球の処理
免疫反応
などに関与します。
だから、
「左上腹部が硬い」
↓
「脾臓を緩めよう」
では足りません。
むしろ、
なぜ左下位胸郭が動かないのか?
横隔膜はどう動いているのか?
胸椎は動いているのか?
胃・左腎周囲との関係はどうか?
呼吸で変化するのか?
と考えていく。
そして、
脾臓そのものではなく、脾臓を取り巻く解剖学的環境を評価する。
この視点を持つことで、脾臓アプローチは単なる「内臓を触るテクニック」ではなく、
胸郭・呼吸・腹部・全身運動をつなげて考える臨床評価
へ変わってくると思います。
ALLアプローチ協会
代表 山口拓也
























