ALLアプローチ協会 関東支部長 鈴木 正道です。
今回は、「胃の形と動きをイメージしてアプローチできていますか?」
についてお伝えさせていただきます。
まずは胃の構造をおさらいしましょう。
【基本構造・機能】
胃体部・底部と前庭部より構成された
管腔臓器で糖蛋白よりなる粘液と粘液層の内に
重炭酸を分泌しうる円柱上皮で覆われています。
胃の上皮は透過性が低く、胃内に存在する塩酸やペプシンが
粘膜内に侵入しない構造をしていて、
体部・底部では胃粘膜は塩酸を産生する壁細胞、
ペプシノーゲンを産生する主細胞、
ヒスタミンを分泌するECL 細胞を中心とした内分泌細胞を含む胃底腺を有しています。
一方,前庭部では粘液分泌細胞とガストリンを分泌する
内分泌細胞であるG 細胞を含む幽門腺を有し、
胃底腺粘膜と幽門腺粘膜の境界は、内視鏡検査で同定可能で腺境界と呼ばれています。
筋層は輪走筋,縦走筋に加えて胃体部は斜走筋層を有している。
前庭部は筋層の厚い幽門輪を経て十二指腸につながる。
胃は食物を貯蔵する、殺菌する、消化する、という複雑な生理機能があります。
食事として摂取された食べ物は、いったん胃の底部に貯蔵され、
胃の底部に食物を貯蔵するために胃底部、体部は、食物の摂取に伴って拡張し胃内腔を広くすることで内圧の上昇を抑えている。
このような食事に伴う胃の拡張反射を「適応性弛緩」と呼びます。
適応性弛緩の働きで、いったん胃底部に貯蔵された食べ物は
塩酸と消化酵素が混合されるとともに、
少しずつ胃前庭部に運ばれて化学的、物理的消化が行われる。
唾液中には約108/mL の細菌が存在し食物中にも多数の細菌が存在しています。
胃内ではこれを殺菌し菌数は102/mL 程度にまで減少する。
この殺菌作用は主に胃内が塩酸で、pH1 ~ 2 に低下することで行われている。
酸性条件で活性を持つ消化酵素である
ペプシンと胃の前庭部の粉砕運動によって
物理化学的に食物を消化し、食物の大きさが2mm 程度より小さくなるまで
消化された食物は順次幽門輪を通過して十二指腸に流入する。
食後期胃運動では、2mm よりも大きな食物塊は
胃から十二指腸へは排出されないそうです。
胃の機能について話してきましたが、胃の動きは、食道から続く蠕動運動の
続きだと言うことを忘れてはいけません。
食道にも胃の動きに影響を与える反射があり、
嚥下と食道を通過する刺激で、胃底部(上部)が弛緩する「受容性弛緩」
という反応もあるので覚えておきましょう。
そして、食物が胃に入ると胃底部が拡張することでいったん食べ物は、貯留されます。
これを適応性弛緩といいます。
胃底部で粥上になった食物は、蠕動によって胃前庭部に移動し、
胃前庭部の蠕動運動(1分間に2回ぐらいのゆっくりとした波のような動き)
によって細かく粉砕しながらメインの消化活動を行っていきます。
【胃の動きの勘違い】
ここからは私の胃に対するイメージの勘違いをシェアさせていただきます。
まず、私が勘違いしていた大きな間違いが
解剖の教科書やテレビの胃薬などのCMでおなじみの胃のイラストがそのままの形で
腹腔内にあると勘違いしていたこと。
空腹時は小さくしぼんでいるので、内臓アプローチするときのイメージや位置が
だいぶ変わってくるので注意が必要です。
空腹時、食後で胃の大きさや位置も変化します。
胃はただの袋ではなく、前半の胃底部で胃酸とペプシンを食べ物と
混ぜ合わせる動き、後半の前庭部ですりつぶして細かくする動きの
部位による二つの機能が働いています。
胃底部で溜めることができ、そこから徐々に胃前庭部に流れて行くことをイメージする必要があります。
そしてこの動きを調整しているのが、自立神経による調整であること。
自律神経が調整して動かしている胃の筋は、三層構造で、腸や食道よりも
蠕動運動による粉砕機能が重要となることもポイントとなります。
胃は胃酸の分泌の調整を「脳・胃・腸」で行っており、
脳で分泌が促通、胃で分泌、腸で抑制の働きをしているのでこスイッチの機能を
コンディショニングすることも重要となります。
腸に食べ物が流れてくると、消化は抑制されますが、間食やだらだら食べる生活をしていると、
胃の活動が活発になることで小腸の蠕動運動が阻害されたりもするので食べるタイミングや間隔も
消化・吸収を全体的に考えるのであれば重要となります。
胃の機能が低下するとたんぱく質の消化が悪くなり、当然吸収も悪くなります。
たんぱく質は体の中で解毒・消化や代謝に必要な酵素の材料になるので、胃の可動性や自動運動、
血流を改善させることはとても重要な考え方になりますので、是非参考にしていただければ幸いです。
本日は以上となります。
鈴木正道