おはようございます。
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誠にありがとうございます。
ALLアプローチ協会 関東支部長
鈴木正道です。
今回は
「脳間質液、脳脊髄液(CSF)の排液」
に関してお伝えさせていただきます。
脳脊髄液に関しては
オステオパシーの教科書を読めば
ある程度のことも書いてありますが、
今回は細かい経路の話をさせて頂きます。
【脳間質液の排液】
成人脳では,脳脊髄液140 mlに対して
脳間質液は280 mlも存在しています。
脳間質液の組織動態は近年少しずつ解明され,
病的状態における意義も考察されています。
脳にはリンパ組織はないが,
細胞間質液は活発に産生され,
脳病変の多くに炎症や免疫反応が関与している.
このような事実から
間質液すなわちリンパ液の排液機構が
他臓器とことなるシステムで存在すると
考えられています.
ここで注意したいのは、
脳にある血液以外の液体は脳脊髄液だけと
勘違いしがちだが、
間質液(リンパ液)があることも重要な
ポイントです。
そして,以下に記述する
脳動脈周囲の血管周囲腔が
機能的にリンパ管に相当すると
考えられています。
脳毛細血管内皮細胞の基底膜と星状膠細胞の間には,
血管周皮細胞が散在し,細動脈レベルになると
中膜平滑筋細胞に置換されます。
星状膠細胞との間には柔膜が介在して
血管内皮細胞基底膜との間に血管周囲腔を形成し、
血管周囲腔には、厚さ約150 nmの基底膜が豊富にあり、
灰白質細胞間隙が約20 nm、
白質線維間隙が約80 nmであることを考慮すると、
脳代謝産物をふくんだ間質液の流通路としては、
充分に機能すると考えられているそうです。
脳表では軟膜が柔膜に融合し、
くも膜下腔では動脈の外膜を柔膜が被っています。
血管周囲腔には、骨髄由来マクロファージに属する
血管周囲細胞が常在し、恒常性の維持や免疫担当細胞の
役割をする可能性が示唆されている。
実験として
脳灰白質にアルブミンを微量低速注入すると、
毛細血管基底膜から動脈の血管周囲腔に選択的に分布し、
最終的には頸部リンパ節に到達する.
したがって、脳間質液がリンパ節に排出されるという点で、
他臓器のリンパ排液と機能的に同じであり、
脳リンパ排液として成立すると言われています。
【脳脊髄液の排液】
脳脊髄液は脈絡叢や脳表の毛細血管から産生され、
吸収路は脳表の毛細血管・頭蓋内くも膜顆粒・
脳神経や脊髄神経周囲静脈洞のくも膜顆粒
嗅神経に沿って頸部リンパ節にいたる
リンパ経路などがあります.
これらはある吸収路が機能不全に陥った場合でも
他の吸収路が代償できるように存在しています。
吸収路の発達は種によって異なり、
ヒトの一生でも発達や吸収配分は変化します。
さらには呼吸・循環・体位によっても
絶えず吸収配分は変化していると考えられています。
私も知らなかったのが嗅神経からの排液。
くも膜下腔の髄液の一部は
嗅神経の頭蓋底師板貫通部の伴走チャンネルを通り
直接頭蓋外鼻粘膜下組織にある
リンパ細管に入った後頸部リンパ節に
到達する経路があり、動物実験では脳脊髄液全体の
約50%が吸収されるという報告があり
この経路はヒトでも存在することが確認されています。
脳脊髄液は脳間質液と脳室壁・脳表軟膜・くも膜下腔動脈の
血管周囲腔で交通しているので一つの流れとして
影響しあっています。
脳間質液は、白質では神経線維間隙を通って
脳室壁から脳室内に入り
脳室壁の水の通過は両方向性であり、
生理的状態では脳室内へと移動しているが、
水頭症などで脳室圧が亢進する際は
逆方向に移動しうると考えられています。
脳表軟膜では水は軟膜下腔と、くも膜下腔を両方向性に通し、
くも膜下腔の動脈周囲腔は柔膜で被われており
同様に水はくも膜下腔との間を両方向性に通過します。
脳灰白質へのトレーサー注入実験では
間質液の約10~15%が脳脊髄液へ移動する
という報告があります。
こうして排液の方法をまとめてみると、
脳脊髄液をキチンと排液して循環を整えていくには
リンパの流れや血管周囲腔の中に流れる液体の流れが
スムーズであることが脳内の液体の流れにとって
とても重要なようですね。
もちろん一次呼吸といわれる頭蓋の動きもとても
重要ですが、頭蓋の動き以外にもリンパ系・循環系の
アプローチも合わせて行うことで
より脳脊髄液の流れや、排液と産生を整えていくことに
繋がりそうですね。
私の臨床上、首と鎖骨下が固まっている方は
頸動脈の流れが低下し、脳血流の低下から
めまいや、頭痛、筋力低下につながりやすい印象です。
神経系の伝達をよくするためにも脳内の液体は
きちんと流しておきたいですね。
次回は脳脊髄液の流れに関して、
最近の知見をお伝えさせていただきます。
本日は以上となります。
ALLアプローチ協会 関東支部長 鈴木正道