解剖学

後頭下筋とは?|プロのセラピストが知っておきたい解剖学・評価・アプローチ

こんにちは。
ALLアプローチ協会の山口です。

今回は、後頭部から上位頸椎に存在する後頭下筋群について解説します。

後頭下筋と聞くと、

・首の付け根にある小さな筋肉
・頭痛のときに緩める筋肉
・ストレートネックで硬くなる筋肉

このようなイメージを持つ方が多いかもしれません。

しかし、プロのセラピストが後頭下筋を扱う場合、単に「首の後ろを押して緩める」だけでは不十分です。

後頭下筋の深部には、

・後頭骨
・環椎
・軸椎
・椎骨動脈
・後頭下神経
・後頭環椎関節
・環軸関節
・後頭下三角
・筋膜
・硬膜との結合組織

などが存在します。

つまり、後頭下筋へのアプローチでは、筋肉だけではなく、

上位頸椎の関節運動・神経・血管・固有感覚・硬膜との位置関係まで理解すること

が重要になります。

今回は、後頭下筋群の起始停止だけではなく、臨床で役立つ解剖学を整理していきます。



【後頭下筋群とは?】

後頭下筋群は、後頭骨・環椎・軸椎の間に存在する4つの筋肉の総称です。

構成する筋は、

・大後頭直筋
・小後頭直筋
・上頭斜筋
・下頭斜筋

の4つです。

どれも非常に小さな筋ですが、頭部と上位頸椎の細かな位置調節を担っています。

また、これらの筋は第1頸神経後枝である後頭下神経によって支配されています。

後頭下筋を理解するときは、

「首を動かす筋肉」

ではなく、

・頭部の微調整
・環椎・軸椎の安定化
・固有感覚
・眼球運動との協調

に関わる筋として考えると、臨床とのつながりが見えてきます。

【4つの後頭下筋を整理する】

大後頭直筋

大後頭直筋は、軸椎の棘突起から起こり、後頭骨の下項線外側へ停止します。

主な作用は、

・頭部の伸展
・同側への回旋

です。

左右が同時に働けば頭部を伸展させ、一側だけが働けば同側への回旋に関与します。

ただし、臨床では大後頭直筋だけが単独で働くことは少なく、

頭板状筋や下頭斜筋などと協調して運動しています。

小後頭直筋

小後頭直筋は、環椎後結節から起こり、後頭骨の下項線内側へ停止します。

主に頭部伸展へ働きます。

この筋で重要なのは、**硬膜との結合組織性連続(筋硬膜橋)**が報告されていることです。

しかし、

「小後頭直筋を緩めれば硬膜が正常化する」

と断定できるわけではありません。

解剖学的な連続性と、手技の効果は分けて考える必要があります。

上頭斜筋

上頭斜筋は環椎横突起から後頭骨へ向かいます。

作用は、

・頭部伸展
・同側側屈

です。

また、後頭下三角の上外側を形成する筋でもあります。

下頭斜筋

下頭斜筋は軸椎棘突起から環椎横突起へ向かいます。

4つの筋の中で唯一、後頭骨へ付着しません。

そのため、頭を直接動かすというより、

環椎を軸椎に対して回旋させる筋

として理解すると分かりやすくなります。

頭部回旋の左右差を見るときには、非常に重要な筋です。

【後頭下筋の「伸展」はどこの関節なのか?】

教科書では、

「後頭下筋は頭部を伸展する」

と書かれています。

しかし臨床では、

どこの関節で伸展しているのか

まで考える必要があります。

後頭環椎関節では、主に屈曲・伸展が起こります。

いわゆる「うなずき運動」です。

一方、環軸関節では、主に回旋が起こります。


そのため、

首全体を屈曲させても、上位頸椎が伸展位のまま残っているケースがあります。

頭部前方位では、

・下位頸椎は屈曲
・上位頸椎は伸展

という姿勢になることも珍しくありません。

そのため、後頭下筋を評価するときは、

後頭骨と環椎の位置関係

を見ることが重要になります。

【後頭下筋は固有感覚の筋でもある】

後頭下筋群は、筋力よりも固有感覚の役割が注目されています。

後頭下筋には筋紡錘が非常に多く存在し、

・頭部の位置
・運動速度
・姿勢制御

などの情報を中枢へ伝えています。

つまり、

「筋力を発揮する筋」

というより、

頭の位置を感じ取るセンサー

として考えた方が臨床的です。

そのため、

・頭部位置覚
・眼球運動
・閉眼時の姿勢
・頭部回旋

なども一緒に評価すると、多くの情報が得られます。

【後頭下三角の中には何があるのか?】

後頭下筋群を学ぶなら、

後頭下三角

は必ず押さえておきたい解剖です。

後頭下三角は、

・大後頭直筋
・上頭斜筋
・下頭斜筋

によって形成されます。

その深部には、

・椎骨動脈
・後頭下神経
・環椎後弓

があります。

つまり、

後頭下筋へ深い圧を加える場所のすぐ近くには、

神経や血管が存在します。

だからこそ、

「深部筋だから強く押せばいい」

という考え方は適切ではありません。

後頭下部では、

・筋肉
・神経
・血管
・関節包
・骨膜

が非常に狭い範囲へ集まっています。

圧の方向や深さには十分な配慮が必要です。

【後頭下筋と大後頭神経は別物】

後頭部に痛みがあると、

「後頭下筋が硬い」

と考えられることがあります。

しかし、

後頭部痛では大後頭神経との関係も考える必要があります。

整理すると、

・後頭下神経
→後頭下筋群を支配する運動神経

・大後頭神経
→後頭部皮膚の感覚神経

です。

後頭部痛があるからといって、

後頭下筋だけが原因とは限りません。

上位頸椎関節や大後頭神経、頭半棘筋なども含めて評価する必要があります。



【後頭下筋と硬膜の関係】

近年注目されているのが、

筋硬膜橋(Myodural Bridge)

です。

後頭下筋群と硬膜との間には、結合組織性の連続が存在することが報告されています。

この構造は、

・硬膜を安定させる
・頸椎運動との協調

などへの関与が考えられています。

ただし、

「後頭下筋を緩めたから硬膜も緩んだ」

と断定できるものではありません。

臨床では、

・可動域
・症状
・姿勢
・頭部位置覚

など、実際に確認できた変化を評価することが重要です。



【後頭下筋はなぜ緊張しやすいのか?】

後頭下筋が緊張する背景には、

・頭部前方位
・長時間のデスクワーク
・眼球運動との不一致
・呼吸パターン
・上位頸椎の可動性低下

など、さまざまな要因があります。

そのため、

後頭下筋だけを施術するのではなく、

胸郭や呼吸、眼球運動まで含めて評価することで、より臨床的な視点が得られます。


【まとめ】

今回のポイントをまとめます。

・後頭下筋群は4つの筋で構成される

・頭部の微細な位置調節に関与する

・筋紡錘が豊富で固有感覚との関係が深い

・後頭下三角の深部には椎骨動脈と後頭下神経がある

・筋硬膜橋など硬膜との解剖学的連続も報告されている

・後頭部痛をすべて後頭下筋の問題と判断しない

・後頭下筋だけではなく、呼吸や胸郭、上位頸椎まで評価することが重要

後頭下筋へのアプローチで大切なのは、筋肉を強く押すことではありません。

後頭骨・環椎・軸椎の位置関係を理解し、どの運動や感覚入力が変化しているのかを評価すること。

これが、プロのセラピストに求められる後頭下筋の見方だと考えています。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

ALLアプローチ協会

山口 拓也

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