解剖学

股関節内転症候群と坐骨神経痛の症状・機能障害・施術までのご紹介

【股関節内転症候群と坐骨神経痛について】

皆さん、こんにちは。

ALLアプローチ協会 代表 山口拓也です。

さて、今回ご紹介する内容は【股関節内転症候群】です。

あまり聞きなれない疾患かもしれませんが、簡単に言うと、股関節が常に内転、内旋している人のことを指します。

女性に見られるケースが多いですよね。

整体院、整骨院に来られる女性患者さんのほとんどが立位でも座位でも足が内側に入っている(股関節内転、内旋位)のではないでしょうか。

では、今からその【股関節内転症候群】、そしてそれに関係する坐骨神経痛について記載していきます。

①概要

股関節内転症候群は股関節が内転位かつ過剰に内旋しているものを指します。

股関節内旋を伴う内転症候群では、中殿筋後部や外旋筋群の伸張性収縮が認められ、これらの筋肉が弱化しています。

発症因子は構造上幅の広い骨盤(女性)や側臥位での就寝です。

この状態では、股関節の外転筋群、外旋筋群、関節包の後外側全て伸張されてしまいます。

また、ランナーやサイクリング競技者などは、股関節屈筋群と内旋筋群の活動頻度が高いため、屈曲―内旋筋群、伸展―外旋筋群のアンバランスが生じ、より内転症候群が悪化してしまうケースがあります。

加えて、内転症候群は梨状筋症候群と深い関係があります。



立位でのアライメントが股関節内転、内旋位さらに骨盤が前傾している場合は梨状筋が伸張され、坐骨神経を圧迫し、坐骨神経痛を患う可能性があります。また腸脛靭帯炎にもなりやすくなります。

ですから、大殿筋、中殿筋や梨状筋を調整しても良くならない坐骨神経痛は、股関節内内転、内旋筋群を調整する必要があります。

具体的な筋肉名を挙げると、小殿筋や大腿筋膜張筋、大内転筋などで、触診していくとこれらの筋肉が硬くなっているはずです。

②症状

内転症候群では、股関節外転筋群が強く引っ張られるため、中殿筋付近に強く痛みが出ます。

また、股関節の深部痛、大転子滑液包炎と先ほど挙げた坐骨神経痛、腸脛靭帯炎もよくみられます。

私の臨床経験では、夜間痛、そして朝の痛みが強く、歩いていると楽になるケースが多いと感じますね。

さらに、炎症と筋肉の短縮は筋膜(ラテラルライン)を介して、腓骨筋まで及ぶことがあり、その際は腓骨頭で腓骨神経が圧迫され、神経症状を呈することもあります。

この症状はL4‐L5の神経根症状と類似しているため、病院でヘルニアから来ていると誤診されるケースが多いです。



余談ですが,世間一般では、ヘルニアがあるから痛み、しびれがあると言われています。

また、治すのには、手術しかないと思われています。

しかし、本当にヘルニアが原因で症状が出ているケースは1割満たないのです。

これは海外では普通の話だそうです…なんか悲しいですね。

要するに痛み、しびれの原因は他にあると言うことです。

ですから、皆さんの前にヘルニアで困っている患者さんが来られたら、新事実を伝えて、自信を持って対応してあげてくださいね。



③運動機能障害

立位では、患側の片脚立位を行っている間は、股関節内転、内旋、もしくは外転筋群(主に中殿筋)弱化により、立脚側に体幹の側屈が起こることがあります。

歩行時では、中殿筋に損傷、重度な弱化がある場合は、患側の立脚時に体幹が側屈していしまう中殿筋歩行となります。(トレンデレンブルグ徴候陽性)

ちなみに内転筋群や、大腿四頭筋、ハムストリングスの筋力が強い場合は、中殿筋歩行が認められない時があります。

また、中殿筋が弱化している場合は、代償として、縫工筋や大腿筋膜張筋が股関節外転の主要筋として作用します。



ですから、治療のステップとしては①股関節内転、内旋筋群の調整 ②代償している縫工筋や大腿筋膜張筋の調整 ③股関節外転・外旋筋群の筋出力UPの3ステップになります。

では次は具体的な治療方法ついて説明していきます。

④施術

・股関節内転、内旋筋群、縫工筋の調整

◆内転筋の調整

内転筋は硬結に対して前腕や手掌を使って直接マッサージをしてもいいですが、かなり痛いです。(緩むスピードは速い)

痛みが苦手な方は、筋膜の繋がりを使って治療します。

私の場合はディープフロントラインを意識した後脛骨筋を使った調整をよくします。

◆大腿筋膜張筋の調整

スパイラルラインを意識した腹斜筋使う調整と、ラテラルラインを意識した腓骨筋を使う調整が有効です。

また私は鍼灸師のライセンスを持っていますから、ASIS(上前腸骨棘)付近のある硬結を直接鍼で刺激することもあります。

※ディープフロントライン、スパイラルラインが分からない方は「アナトミートレイン」というワードで調べてみてください。

◆小殿筋の調整

小殿筋は大転子付近のありますから、伏臥位、股関節約90度外転、膝関節約90度屈曲肢位(カエル足)で、大転子付近の硬結をマッサージしていきます。

なお、股関節の軸圧をかけた状態で行うと緩むスピードが早くなります。

◆縫工筋の調整

縫工筋の硬結は起始部と停止部に硬結ができやすいです。

縫工筋は筋肉自体が細いので直接マッサージしても緩んでいきます。

股関節外転・外旋筋群の筋出力UP

◆中殿筋の調整

小殿筋の調整と同様の姿勢を取り、直接マッサージしていきます。

またバックラインを意識したハムストリングスを使う調整も行います。

外旋筋群筋力UP

伏臥位で股関節外転肢位をキープ(15秒×3)

側臥位で股関節外転肢位をキープ(15秒×3)

⑤まとめ

女性のほとんどが股関節内転、内旋肢位になっています。

また女性は股関節に痛みが生じやすく、人口関節の割合も男性と比べれば多いです。

しかし、今日お伝えした内容を読んでいただき、股関節内転、内旋肢位になっているアライメントを整えてあげれば、股関節の痛みも軽減し、将来人口関節に…という事態を防ぐことができるでしょう。

また、今回のことで分からないことがあれば遠慮なく聞いてくださいね。

では、本日の記事はこれで以上となります。

本日もありがとうございました。

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