おはようございます。
All アプローチ協会 関東支部長 鈴木 正道です。
今日は腰痛シリーズ第四回
「腰痛に対して、内臓と体幹機能が運動連鎖とどう関わってくるか」
についてお伝えいたします。
今まで下肢からの歩行運動連鎖に関して、
・骨盤の回旋
・寛骨の前後傾
・寛骨のインフレア・アウトフレア
のコントロールについてお伝えさせていただきました。
これら下肢からの運動連鎖は、主に筋骨格系の働きとして説明しています。
これらに加え、腰痛に対してアプローチするためには
体幹を支える神経学的要素と
内臓の影響の2つを考慮する必要があります。
腰痛患者様で、最後に苦労するのは
体幹機能が安定できず、
動作時の腰部のストレスを改善できないことで
症状の戻りに苦労するケースが多いと思われます。
体幹機能を整えて、腰痛患者を生活レベルで安定させるには
神経生理学的、運動学的に
運動機能が発揮できる必要があります。
まず、神経学について説明します。
【体幹を支える神経学】
〈体幹と意識〉
歩行や上肢の運動において、体幹の運動は
ほとんど意識されない運動として遂行されています。
体幹を意識して運動することもできますが、
どこまで細かく運動できるかは、
人によります。
昔、室伏選手がテレビで
自分は背骨を意識しで好きな個所を動かせるといって
肩甲骨・脊柱を自在に操る様子をテレビで疲労していました。
金メダルをとる人の身体操作能力には驚かされます。
この機能は意識してトレーニングすることで
無意識下でのコントロールへ影響させることができます。
体幹の機能は主に
網様体脊髄路という神経によってコントロールされますが、
この毛様体脊髄路を働かせる背景にある神経システムが、
皮質脊髄路と脊髄小脳路です。
皮質脊髄路では、意図した運動を、運動指令として実際に筋骨格系に伝えます。
皮質脊髄路は主に手先・足先への指令が主になりますが、
その手先・足先に指令を出す際、同時に毛様体脊髄路にも指令が出され、体幹筋の活動が促されます。
この体幹筋の活動は、ほぼ意識されない運動として
コントロールされますが、この時、体幹筋の状態がどうなっているかがとても重要です。
正常な神経システムがあっても、筋の短縮があっては筋が働きません。
この筋の状態が重要な理由として脊髄小脳路の説明をさせていただきます。
皮質脊髄路からの指令で行われる意識した運動を遂行するに当たり、網様体脊髄路が無意識に姿勢をコントロールしています。
その無意識化で行われる姿勢の誤差を修正する神経が脊髄小脳路です。
実際運動を遂行しながら常に運動をしてどうだったか
運動中の情報を小脳に送り、誤差を修正しながら動作を正確に円滑に行えるよう
調整する情報を脳にフィードバックしています。
ではその調整をする情報とは
どういった情報か?
それは固有感覚情報です。
〈固有感覚〉
筋の筋紡錘・筋膜、腱の腱紡錘や皮膚から得られる情報です。
つまり、筋・筋膜・皮膚・腱・の状態が
不良であるとこのフィードバックがうまくいかなくなるので運動遂行が困難となります。
以前に脳卒中のメルマガで
筋が最大限に働ける3つのポイントとして、
「十分に筋の長さが作れる筋の形が良好である・筋の位置が適正である」
を挙げさせていただきました。
これは筋が最大限に働ける条件ですが
体幹機能が最大限に働けるには
①足部からの運動連鎖が機能する状態
=骨盤機能が発揮しやすい下肢の状態
(前回までの腰痛メルマガパート1~3)
②筋・筋膜・腱・皮膚の状態が良好
=組織学的に、筋・筋膜の滑走が良好で
皮膚・腱・筋の滑走が良好な状態が必要です。
さらにここで筋の良好な状態で体幹機能と体幹筋について説明します。
体幹筋とは狭義の意味では
腹横筋・腹斜筋・横隔膜・多裂筋・骨盤底筋を
指して説明することが多いですが、
この体幹筋群が
最高にパフォーマンスを発揮するには、
股関節周囲筋・肩甲帯周囲筋のコントロールも重要となります。
網様体脊髄路は細かく言うと
延髄毛様体脊髄路と
橋毛様体脊髄路に分かれますが、
延髄毛様体は股関節・肩甲帯周囲を調整し、
橋毛様体は体幹中心部をコントロールします。
つまり、神経学的には
肩甲帯・股関節も体幹として作用しています。
そして、荷重下では下肢からの運動連鎖だけではなく、
下肢の筋連鎖・筋力も重要な体幹機能となります。
大腰筋が働ける状態や長さをコントロールできる状態は、
歩行の運動連鎖が働ける身体環境が重要となりますが、筋の関係性でも、
立位で腰椎の前弯を適正に保つための大腰筋と拮抗する筋は、
下腿三頭筋、ヒラメ筋
大腿四頭筋遠位部
ハムストリングス近位部
大殿筋
この筋肉が大腰筋と張力とつり合いを調整しながら重心のコントロールをしています。
※この説明は動画でもさせていただきます。
こういった体幹筋が働けるための
神経系と組織の状態・運動連鎖の状態が整って初めて
体幹機能が発揮され
腰部の安定が得られた動作遂行が可能となります。
そして最後に内臓機能です。
③内臓機能
内臓は横隔膜や、腹壁を介して腹横筋に連結、膀胱・直腸系は骨盤底筋に影響を与えます。
血管系でも筋と内臓で血流を分ける血管分布が多くあります。
さらに重力下では内臓が下垂することで
体幹筋のアライメントを崩して、骨盤・股関節・腰椎の安定性を低下させます。
筋が働くにも・関節運動を適正に働かせるにも内臓アライメント・位置の不良や内臓循環・内臓可動域・内臓柔軟性の不良はとても重要になります。
筋・骨格・関節系にアプローチをして、運動機能を促通しても
症状の戻りやアライメントの崩れが戻ってしまう場合は、内臓のアプローチが必須となりますので是非応用してみてください。
本日も最後までメルマガをご覧いただきありがとうございました。
今日も一日良い時間をお過ごしください。
鈴木 正道