おはようございます。
いつも当協会の公式ブログをお読みいただき、誠にありがとうございます。
ALLアプローチ協会 関東支部長 鈴木 正道です。
今回は、
「五十肩・肩関節拘縮を解消・鎖骨・第一肋骨・小胸筋の解剖学的重要性」
についてお伝えいたします。
最近片麻痺の方を担当していて頭頸部・肩甲帯の短縮が強い方が多く、
頭部の正中保持が困難な場合に小胸筋にアプローチをすると
僧帽筋上部の短縮や胸椎の伸展可動域に改善がみられました。
頭頸部・胸椎・鎖骨周囲・肩甲骨の可動性が向上することで前鋸筋の活動が得られ、
体幹の姿勢制御にも改善が得られてくるケースが多いです。
同時に重度の肩関節拘縮がある方、上腕骨骨折や拘縮傾向の五十肩で
僧帽筋上部で上腕骨を挙上する代償パターンの学習が進んでいるような
患者様では同じような問題点がみられるケースが多くあります。
単純に僧帽筋上部のストレッチをするだけでは
この問題点は改善されないケースが多いです。
ここで重要な解剖学的構造です。
鎖骨から鎖骨下筋→肋骨烏口靭帯→小胸筋→鎖骨胸筋筋膜とつながる筋膜のラインがあります。
烏口肋骨靭帯(costocoracoid ligament)と胸筋筋膜に包まれている小胸筋の図が見て取れると思います。
この胸筋筋膜は鎖骨からぶら下がるように小胸筋を包んでいるようにでは感じますが、
その胸筋筋膜が鎖骨の下を通ってさらに頚部の斜角筋や
乳突筋を包む頚部前面の膜までつながっていることが分かると思います。
胸筋筋膜が鎖骨や肋骨に張り付きながら頚部まで広がっていく構造はとても興深いですね。
頚部・肩甲帯・胸椎すべてに影響を与えるこの構造は、鎖骨がキーになっていて、鎖骨下筋・小胸筋のがグループで鎖骨・第一肋骨・烏口突起の動きを制限することがわかります。
この鎖骨・第一肋骨・烏口突起という構造にどのような重要な特徴があるか説明していきます。
【血管系】
◆鎖骨には、鎖骨下動脈・鎖骨下静脈が通っていますね。
この血管の重要性は今更ですが、この血管の走行を改めて確認すると
鎖骨下静脈は、前斜角筋の前方から
鎖骨・鎖骨下筋の下
第一肋骨の上を通り、
小胸筋の後方を通り上腕へ向かい、
鎖骨下動脈は
前斜角筋の後方を通り、鎖骨・鎖骨下筋の下、第一肋骨の上を通り、小胸筋の後方を通り上腕へ向かいます。
先ほど胸筋筋膜とその筋膜に覆われる斜角筋・鎖骨下筋・小胸筋の影響をもろにうける血管だということがよくわかりますね。
【リンパ系】
鎖骨下はリンパ本管が鎖骨下静脈へ合流する重要な部分です。
リンパ液の最終的な排出口になるので、鎖骨下の循環が悪いということは
体液循環や免疫機能に大きく影響するので重要になります。
鎖骨・第一肋骨・胸筋筋膜の柔軟性・可動域を評価・アプローチしていくことで、炎症の急性期の腫れや浮腫みも早期に回復を促すことが可能となります。
特に重要なのが左の鎖骨下、右上肢・肩甲帯以外のすべてのリンパが、左鎖骨下に最後は流れ着くようになっているため左鎖骨下は全身循環への影響が特に大きいです。
左鎖骨下に関しては表面の皮膚の柔軟性
胸骨鎖関節の柔軟性、第一肋骨の可動性
(胸肋関節・肋椎関節)
斜角筋・鎖骨下筋・小胸筋の柔軟性すべてを
評価・アプローチすることが重要となります。
【神経系】
鎖骨下を通る神経系といったらもちろん腕神経叢になりますが、
その中でもポイントがC5-7から始まり、途中鎖骨下神経という枝を鎖骨下筋に分岐させながら前胸筋筋を支配する長胸神経とうい神経です。
これも鎖骨・第一肋骨間を通り前鋸筋を支配します。
小胸筋・鎖骨下筋が、短縮しているケースでは、僧帽筋上部の短縮も合併し、前鋸筋の収縮を得ることが困難になっているケースがとても多いです。
三頭筋・前鋸筋の収縮が得られにくい肩関節周囲炎や上腕骨骨折、片麻痺患者様って多くないですか?
骨折では固定期間が長いと小胸筋・大胸筋の短縮に加えて、僧帽筋上部の短縮、前鋸筋機能低下が
合併するケースが多くなりますが、この鎖骨下の可動性と
胸筋筋膜の柔軟性は重要なアプローチポイントとなりますので覚えておいてください。
【アプローチのポイント】
筋膜のつながりを使って緩める手技も多くありますが、
重度の短縮があるケースでは、深部の小胸筋をグリップして、
肋骨から引きはがすようにモビライゼーションすることも必要となります。
筋にアプローチすべきなのか、
筋膜にアプローチすべきなのか
関節なのか、循環なのか
目的を明確にアプローチを
使い分けられるようにしましょう。
本日は以上になります。
最後まで当協会の公式ブログをお読みいただき、
誠にありがとうございました!
ALLアプローチ協会 関東支部長 鈴木 正道