その他

重症肩関節拘縮アプローチ(テクニック紹介あり)

ALLアプローチ協会 関東支部長
鈴木正道です。


今回は,「重症肩関節拘縮アプローチ」

に関してお伝えさせていただきます。


今年は重度肩関節拘縮の方を担当する機会に恵まれて

たくさんの経験をすることができたので、みなさんにポイントをシェアしていきたいと思います。

症例
60代女性

左の乳癌術後に医師から体操をしておくように

簡単な体操を指導され、体操をしていたら

右の肩関節周囲炎を発症。

整形外来を受診されるも痛み止めと注射をして効果なし。


手術から1年、痛みが出てから11ヶ月が経過して

私の元に来た時には、肩関節可動域は屈曲60° 外転40°程度でした。



加えて右手首にも炎症が広がり手首・手指にも可動域制限がありました。

この方の一番の特徴が、抗がん剤をしていて粘膜系に

次々に炎症を起こしてしまい、

口腔内や咽頭部に炎症を起こして、食事がまともにとれていないことでした。

胃腸症状もあり、消化器系も弱っていて、なかなか全身状態も悪い状態で

痛み・炎症・拘縮によって仕事復帰が、できずに困っていらっしゃいました。

初期は触ることも困難なほど痛みが強いため

肩以外からのアプローチと栄養指導にて炎症と痛みの鎮静化を図りました。

栄養指導:

とにかく固形物の摂取が困難であり、

胃に炎症があるためたんぱく質の消化吸収が

低下している状態だったので、

初期は肉の煮汁や昆布や魚介系の出汁を

合わせたものをできるだけ摂取して頂き、

アミノ酸状態でたんぱく質の吸収を促しました。

加えて少量でも取れるたんぱく質は、魚をすり身にしたり、肉をひき肉にして

さらによく噛んで食べることに集中して頂き、

たんぱく質を徐々に体に入れてもらうことを地道に行いました。

身体機能アプローチ:

当然のように内臓の動きや柔軟性が、低下していたので

主に胃の炎症と萎縮を改善できるよう

内臓可動性を引き出し、横隔膜の動きを改善させ副腎の疲労をケアする目的で

膵臓と副腎、視床下部・下垂体と副腎、のケアをすることでストレス反応による

胃の炎症をコンディショニングしていきました。

1ヶ月程で慢性的に咽頭にできていた口内炎も改善し、ある程度食事がとれてきたので

体力も改善され痛みと炎症が引き始めました。

1年痛みと炎症に苦しんでいて、1ヶ月で痛みと炎症が引いたことに

本人も安堵してストレスもだいぶ減ってくださったようで、笑顔も増えてきました。

この時点でまた肩関節は屈曲90° 外転70°ようやく肩を触らせてもらえる状態に

もってこれたのでここから、肩関節の構造にアプローチを開始しました。

◆構造のポイント

1年物の拘縮肩になると、ちょっとやそっと筋膜をゆるめたところで、可動域は改善しません。

ポイント1

広背筋・大円筋による外旋制限、長期間の痛みによる疼痛回避姿勢によって

とにかく外旋制限が目立ち、外旋ができないということは

肩甲骨の下制内転・胸椎伸展が制限されるので

広背筋に関しては、骨盤付着部周囲では

筋膜張筋・外側広筋から

腹斜筋・広背筋への連続性があり強固な短縮ができているので

集中的に股関節・寛骨の分離、寛骨と肋骨広背筋の分離を引き出しました。

肩甲骨周囲の広背筋は丁寧に前鋸筋と広背筋を分けるように広背筋のエッジを

皮膚ごとつかむように触ることで、皮膚と筋に感覚を入れながら筋の硬さを

緩ませていき、最後に上腕骨と肩甲骨間で固まっていた

広背筋を上腕三頭筋と広背筋・大円筋から分離させるようにそれぞれの筋を

細かく触り、徐々に上腕骨の外旋を引き出していくことで

腱板周囲の筋活動も得られてきました。


◆ポイント2

左右広背筋による肩甲帯と骨盤帯の姿勢制御障害

広背筋が左右で短縮していると、脊柱の軸伸展の制限に加えて肩甲骨の動きが制限されます。

今回のケースの場合、

左の乳がんも術後であるため

左右の広背筋の問題を整える必要がありました。


ポイント3

僧帽筋上部による鎖骨の制限。

僧帽筋上部は肩関節屈曲が制限されると

屈曲の代償として肩甲骨を挙上するため

鎖骨も挙上したまま動かなくなります。

僧帽筋上部と一緒に大胸筋鎖骨部繊維の

動きの改善や前鋸筋の促通をしながら

鎖骨・肩甲骨の動きの改善が必要でした。


ポイント4

上腕骨頭の骨膜と肩甲下筋の付着部の硬結

最後に屈曲120°付近で制限がなかなか改善

できない時期がありましたが、

肩甲下筋が上腕骨に付着する部位の

骨膜にハンマーで振動刺激をするアプローチをすることで

急激に改善がすすみました。

慢性的な炎症症状のあとは、筋・腱に

線維化がおきるので、

一度刺激をいれながら血流を促していくことで

改善してくるケースもあります。

今回のケースは初期の段階で拘縮と経過が長く、

医師からも日常生活がなんどかできればと

言われていましたが、最終的には屈曲170°

外転180°まで改善できたケースでした。



正直途中で癒着剥離などの手術が必要なケースかと

思いましたが、栄養指導と骨刺激で劇的に

改善が得られたのでみなさんにご報告させて

いただきました。

拘縮のリハビリ、治療でお困りの方の

参考になれば幸いです。

最後まで当協会の公式ブログをお読みいただき、

誠にありがとうございました!

ALLアプローチ協会 関東支部長 鈴木正道

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